今週の一枚 OLDCODEX 『Fixed Engine』
2016.06.06 07:00
OLDCODEX
『Fixed Engine』
2016年6月8日(水)発売
ラウドロックの激情とエレクトロニックなダンスミュージックとしての機能を併せ持つOLDCODEX。2016年6月8日(水)、これまでのシングル曲を集めたアルバム『Fixed Engine』(新曲も2曲収録!)がリリースされる。改めて、1stシングル“[BLUE]”から、昨年12月にリリースされた最新シングル“Aching Horns”までを時系列に聴いていくと、様々なアプローチの楽曲が並びながら、その軸には揺るぎ無く「ロック」のビートが存在していることがわかる。
美しく幻想的なサウンドが独特の浮遊感を生む“[BLUE]”。このデビューシングルは、非常に多面的なイメージを持つ楽曲だった。この曲には、ニューウェイブ的な変則リズム、奥行きのある乾いたエレクトリックサウンド、エモーショナルでラウドなギターなど、様々な方向性(可能性)が内在していて、この先どちらの方向に進んでいくのだろう、そしてどちらに進んでいっても面白いと思わせるものだった。そこから、Ta_2(Vo)とYORKE.(Painting)が突き詰めていったのは、やはり「ロック」であり、より激しく熱く聴き手の耳に飛び込んでいくようなサウンドと歌詞だ。今回、新曲が2曲収録されているのだが、その2曲が始めと終わりに、過去のシングル曲を挟む形で収録されているため、その道のりが非常にくっきりと浮かび上がってくる。とにかく、この新曲2曲の破壊力がすごい。
まず1曲目に収録されている新曲“Milestone”。この曲を、シングルコレクションという、いわばベストアルバムの要素も持つアルバム作品のオープニングに持ってくるということ自体、現在の彼らの自信をうかがわせる。この曲、とにかく1曲の中での振り幅が過去最高と言っていいくらい広い。静かなラップパート、そしてAメロのTa_2の美しいボーカルに聴き入っていると、リズムのテンポが上がり、喉も張り裂けんばかりのシャウトへと繋がっていく。シャウトというより咆哮という言葉の方がふさわしいほど、超絶にエモーショナルなボーカル。“Milestone”というタイトルが物語るように、まさに、これまでのOLDCODEXの歩んできた道のりをすべてさらけ出して、さらに次へと進むための場所(作品)という意味合いを強く感じる。
一方、アルバムのラストに収録されているもう1つの新曲“Anthem”は、ビートの効いた疾走感あふれるロックンロール。これもまた、Ta_2のボーカルが、OLDCODEXとしての現在地を指し示すように力強く響く。YORKE.の手による歌詞は、《try to move on 本能的だろう?/隠さずに願望露わにして/翻る態度はもう捨てて》と、自分たちが選んだ道を突き進んでいくための強い覚悟を表し、《手にしてたはずの明日を失っても/今を捕らえ続けろ》と、過去の迷いとの決別が描かれる。この曲に“Anthem”というタイトルをつけたことにも、彼らの強い思いが表れている。聴いてもらえればわかるが、決してライブでシンガロングするために作られた曲ではない。しかし、聴く者ひとりひとりにとっての、また彼ら自身にとっての「これから」を鼓舞するようなメッセージは、まさに「アンセム」と呼ぶにふさわしい。
先月のインタビュー(『ROCKIN’ON JAPAN7月号』に掲載)で、誌面には書ききれなかったのだが、この“Anthem”についてTa_2は「バンドとしてガツっと攻撃的にいく曲を作りたかった。これまで理性はちゃんと働いていたから、1回それをはがしたかった」と語っていた。YORKE.は「“Anthem”はきっと、ライブでもっと強いものに変わっていくと思う」と、さらなる攻撃モードを示してくれた。今回収録されている過去のシングル曲たちも、ライブで演奏するたびに、その形を変化させてきたという。その原点を集めて「マイルストーン」としてここに置き、そして、バンドとしての「アンセム」は常に最新のモードに更新されるべきであるという、彼らの意思を示した、非常に意義深い作品である。(杉浦美恵)