1stフルアルバム『フレデリズム』以来約2年4ヶ月ぶり、フレデリックにとって2枚目のフルアルバムである『フレデリズム2』。
押韻と反復、裏返しの表現というフレデリックの十八番的な要素を研ぎ澄ました“スキライズム”、どことなく初期曲っぽさがある“他所のピラニア”など、これまでの要素を感じさせる楽曲も収録されているが、アルバム全体のトーンは前作とは明らかに異なっている。ポップミュージックの系譜に対する敬意が垣間見える演奏・アレンジ面に関しても語りたいポイントはもちろんたくさんあるが、最も分かりやすく変化したのは、歌詞。もう少し正確に言うと、歌の中ではっきり伝えておきたいことがあるからこそ、それに伴い、演奏・アレンジ面も変化したのだと思う。
「リズム&響きのループ感」と「毅然としたメッセージ」のコンビネーションを磨き続けてきたこのバンドだが、今作では後者の方により重きが置かれている印象。そこで歌われているのは、自分たちがリスナーをまだ見ぬ未来へ連れていくのだ、というバンドとしての意思だ。自己紹介のようにいろいろなことをやっていた『フレデリズム』と比べて、今回はその方向である程度メッセージが統一されている。元々神戸ワールド記念ホールで鳴った時の光景をイメージして作られた“飄々とエモーション”がラストを飾っていることも非常に象徴的だ。
デビュー以前~当初はどこか掴めない感じのあったこのバンドが、自分たちの意思をここまでまっすぐ歌うようになるとは正直あの頃は思ってもいなかった。一方、聴き手と顔を合わせ、同じ空間を共有するライブという場においてとりわけ彼らは、自分たちの人間性・バンドのドラマのようなものを飾らず出すようになっていた。そういうコミュニケーションの積み重ねがバンド自身を変えていったのかもしれない。
今回のリリースに伴い、5つのフェーズに分かれたロングツアー「FREDERHYTHEM TOUR 2019-2020」の開催を発表したフレデリック。こういうトライに臨むことができるのは、深掘りしがいのある、様々な遊び方を提案することのできるアルバムを生み出すことができたからこそだろう。懐かしのハコ含む道のりを経て横浜アリーナに辿り着いた時、そこにはいったいどのような世界が広がっているのだろうか。今もツアー中であるのにこんなことを言うのはさすがに気が早すぎるかもしれないが、でもやっぱり、それが今から楽しみなのだ。(蜂須賀ちなみ)