今週の一枚 UNISON SQUARE GARDEN 『DUGOUT ACCIDENT』

今週の一枚 UNISON SQUARE GARDEN 『DUGOUT ACCIDENT』 - 『DUGOUT ACCIDENT』通常盤『DUGOUT ACCIDENT』通常盤

UNISON SQUARE GARDEN
『DUGOUT ACCIDENT』
2015年7月22日発売



突然だが、田淵智也(B)の書く歌詞は、さまざまなシチュエーションや登場人物やストーリーを描きながら、常に「音楽」をあいだにおいた「自分」と「君」の関係へと還っていく。それが彼のミュージシャンとしてのプライドと誠実さを表していると思うのだが、その音楽にまつわる関係性は常にその場に留まることなく、強烈な意思とともに未来へと向かっていく。それがUNISON SQUARE GARDENのロックのダイナミズムだ。

だから、ユニゾンのライヴを観ていると、僕はいつも叫びながら走り出したくなる。とても楽しいから、というのもあるが、それだけではない。モヤモヤした毎日の感情から、果てしなく広がる未来へ託した希望まで、とてつもないロングスケールの景色が、曲が鳴るごとにドカーンと広がるような感覚を覚えるからだ。そしてその先端で、いつも彼らは全力で走っている。彼らを見ていると、その背中を追いかけているような感覚になったりもする。

過去を振り返って儚んだり、現在の自分に不甲斐なさを感じたり、ときには哀しみや怒りも感じながら、ユニゾンのロックはいつも、遠く輝く未来のほうへと脇目もふらず突き進んでいく。その前進力、上昇力、貪欲さが彼らの音楽を進化させ、多くの人を巻き込んでここまできた。その軌跡が封じ込められているのが本作『DUGOUT ACCIDENT』だが、このアニヴァーサリーアルバムでもなお、ユニゾンはあくまで未来を見据えている。

結成10周年という節目を祝福するアルバムとして、シングル表題曲をひとつも収録せず、アルバム曲やシングルのカップリング曲に未発表曲と新曲を加えた構成というのは一見チャレンジングに見えるが、トラックリストを知れば、そして実際にその音源を聴けば、意欲的ではあるとしても決してヤケクソやワガママでこうなっているわけではないということがはっきりと分かる。このアルバムを聴いて感じるものは、まさに彼らのライヴを観ながら感じるものと同じ――つまり、UNISON SQUARE GARDENそのものなのだ。このアルバムには過去を愛でる視点はひとつもない。既発曲の新録が多いのも、曲順が時系列とは関係なく組まれているのも、本作がここから始まる未来へのメッセージだからだ。

本作の幕を開ける、ユニゾン流「星に願いを」ともいえる未発表曲“アンドロメダ”。ストリングスの壮大な音にのせて、夜空の星に仮託しながら斎藤宏介(Vo/G)は《行けるとこまで行って帰らない/遅すぎることはないと思うんだよ》と歌う。そして最後に収録された“さわれない歌”を締める言葉はこうだ。《みんなに届かなくてもいいから/いくら嘲笑われてもいいから/願いながらlet me sing, let me sing/誰にも触れない歌をずっとね》。

UNISON SQUARE GARDENは僕たちの少し先を、未来に向かって走り続ける。目の前にある、触れそうで触れない歌。だから僕たちは、彼らを追いかけたくなるのだ。(小川智宏)
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