今週の一枚 Dragon Ash『MAJESTIC』

今週の一枚 Dragon Ash『MAJESTIC』

今年2月21日、まさにメジャーデビュー20周年記念日当日に東京・EX THEATER ROPPONGIにて開催されたワンマンライブ「20th Anniversary Live Show『MIX IT UP』」。
その本編ラストに立て続けに披露された“Beside You”“光りの街”の眩い言葉と音像とスケール感を目の当たりにして、「この2曲のどちらがアルバムの最後を飾ったとしても、来るべき『次作』はDragon Ashヒストリーを代表する名盤になるだろう」と勝手に思っていた。

しかし――実際、前作『THE FACES』(2014年)以来約3年4ヶ月ぶりのニューアルバムとなる今作『MAJESTIC』で、“Beside You”に続いて最後に収録されていた楽曲“A Hundred Emotions”は、こちらの想像を遥かに超えた輝度と熱量に満ちた終章を描き出していた。
《音楽は鳴り止まない/感情はやり場がない/日々を音楽が助け出す様に/君の感情が溢れ出す様に》(“A Hundred Emotions”)……およそロックの核心そのもののような言葉を、これまで以上に高純度に研ぎ澄まされたメロディとともに結晶させた楽曲には、思わず感動を禁じ得なかった。

“Mix it Up”や“Headbang”といった、ミクスチャーロックバンドとしての「野性の証明」的な楽曲群も内包しつつ、今作で際立っているのはやはり、自分たちのファンか否か、ロックファンか否かという垣根すら超えてリスナー/オーディエンスに作用するような、決然としたバイタリティと訴求力だ。

「時代と闘い衝撃を与えるロックミュージック」としての爆発力と、「今この世界の混沌を生き抜く勇気」を生み出すためのタフネスと、ライブをともに熱く沸き立たせてくれるオーディエンスとの信頼感・連帯感……それらすべてを血肉化してきた、Dragon Ashはこれまでもひとつひとつの楽曲を轟かせてきたことは今さら言うまでもないだろう。
が、それこそ《僕らは星屑のかけら/一つ生まれては一つ消える/だからこそ僕らは星団となる/自分達自身を見失わない為に(訳詞)》と歌う“Stardust”しかり、疾駆するダイヤモンドダストの如きサウンドスケープとともに《その手で両目を覆わないで/君は素晴らしい景色を見つけられるんだ(訳詞)》と呼びかける“Ode to Joy”しかり、ここでのKjの詞世界は、今までDragon Ashが掲げてきたメッセージよりもさらに根源的で、ダイレクトで、しかも普遍的だ。

前作『THE FACES』は盟友・IKUZONEの急逝後、Kjはじめメンバー6人が持てるすべてを捧げて作り上げた、文字通り己の存在証明的な作品だったし、そんな渾身のアルバムの「その先」の風景を作り上げることは、いくらDragon Ashと言えど決して容易ではなかったはずだ。
昨年のシングル『光りの街』リリース時のインタビューでKj自身「『THE FACES』でやりきってんだよね。もうあれで終わってんだよ、今までのDragon Ashは」(『ROCKIN'ON JAPAN』2016年12月号)と語っていた言葉からも、バンドが次のステップに向かうために、それまでとまったく異なるステージへと突き進む必要性を感じていたであろうことが窺える。

そして。KenKenの鉄壁のサポートを得て新たな7人体制を築き上げたDragon Ashは、ロックバンドとしてまったく新しい次元の強靭さと高揚感を――しかも過去の自分たちの足跡もすべて背負ったまま――獲得することに成功している。

《止めどなく鳴らす Rockの様に自由で/それぞれ晒す 僕の様に夢中で/解き放て 蒸せ返ったlove and hate/解き放て 全て溢れ出すまで/100の感情を 消せやしないよ》(“A Hundred Emotions”)

そんなまっすぐな言葉を誰よりも輝かせることができるバンドが、最高に鍛え上がった楽曲とともに、その歌を2017年という時代に響かせている――ロックシーン最前線を走り続けるバンドの「今」の凄味を、誰もが改めて感じるに違いない傑作だ。(高橋智樹)
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