この8月にZOZOマリンスタジアムで初のスタジアムワンマン「VIP PARTY 2018」を観たばかりだが、『EXIST!』以来2年ぶりとなる今作を聴き終えた瞬間に「ニューアルバム全曲今すぐ、ライブハウスもアリーナもすっ飛ばしてスタジアムで観たい!」と思ったし、おそらく誰もが同じ感想を抱くことと思う。今作『Sleepless in Brooklyn』はそれだけのスケール感を備えたアルバムであることは間違いない。
木村拓哉出演のミュージックビデオも話題を呼んだ“アルペジオ”をはじめ、“KABUTO”、“Mosquito Bite”、“MILK”といった既発曲群からも十分すぎるほどに窺えた通り、今作の核は何より、[ALEXANDROS]のロックの本質とアイデンティティを、ニューヨークという世界標準の音楽制作環境において極限まで突き詰め、それを最大限に研ぎ澄ませ鍛え上げてみせたことだ。
重心を落として格段にタフさを増した庄村聡泰(Dr)のドラムサウンド。よりいっそうブルータル&カラフルな訴求力を獲得した白井眞輝(G)のリフワークやフレージング。推進力と爆発力の高純度結晶と化した磯部寛之(B・Cho)のベースライン。そして、“FISH TACOS PARTY”で鋭利にリズムを刻み、“Your Song”や“PARTY IS OVER”ではメロディの化身のように妖艶な歌声を聴かせ、“Mosquito Bite”や“spit!”では燃え盛る野性むき出しの歌を響かせる川上洋平(Vo・G)のボーカリゼーション――。
「海外のプロダクションによるサウンドの変化」だけでは到底説明のつかない、4人それぞれの極限進化。それをもたらした原動力は他でもない、彼ら自身がロックに抱く絶対的な確信と、それゆえに永遠に満たされることのない見果てぬロマンそのものだ。
ロックは最高にダイナミックでカラフルで、ワイルドで強靭で、ポップな表現である――という理想がそのまま結実したような今作は、[ALEXANDROS]自身をこれまで以上にスリリングかつエキサイティングなロックの地平へと押し上げていくことだろう。彼らのキャリアにおいてはもちろん、2018年日本のロックの金字塔的な1枚だと思う。(高橋智樹)