今週の一枚 氣志團 『不良品』
2016.01.25 07:00
氣志團
『不良品』
2016年1月27日(水)発売
ヤンキーと掛けたタイトルからも想像できるように、約3年9ヶ月ぶりとなるオリジナルアルバムのテーマは氣志團自身。全18曲収録というてんこ盛り具合、みんなが聴きたいシングル曲を冒頭に持ってくるおもてなし精神、地元の馴染み深いスポットに因んでビートルズ風にアレンジした“アビイ・ロード”の愛すべき安直さなど、彼ららしさが随所に表れている。
ハイライトは、綾小路 翔の世渡り術をそのまま落とし込んだ“Don't Feel.Think!!”以降、メンバーそれぞれがメインヴォーカルを務める曲が並ぶ中盤だろう。クソ真面目に直球のバラードを歌い上げたり、コテコテの戦隊モノをやってみたりと個性が際立つが、これにより諧謔(ユーモア)も本気(マジ)も正面きってやり抜く漢(おとこ)ひとりひとりにスポットが当たる。さらに、バンドとしての腕っぷしで魅せるインスト後、またいつものお祭り騒ぎへ――という流れを経て、自らの生き様をエンターテインメント/ロックンロールへと直結させる氣志團の姿が浮き彫りになっているのだ。生まれながらのスーパースターではないと自覚しているからこそ、それでもやっぱり大好きな音楽を諦められないからこそ、ありったけ全力を尽くす。思えば氣志團はずっとそうやって戦ってきたし、その姿に私たちは何度も胸を熱くさせてきた。
團長が独りの男に立ち還り弾き語りで届ける“不良品”〜5人で歌う“ライバルズ”という締めに至るまで、泣き笑いに満ちた全18曲は氣志團の生き様そのものだ。(蜂須賀ちなみ)