今週の一枚 WANIMA 『Are You Coming?』
2015.11.02 07:00
WANIMA
『Are You Coming?』
2015年11月4日発売
あのピザ・オブ・デスが初めてマネジメントを手がけるバンドとして、また既に全国各地で大量のキッズを熱狂させる存在として、大注目を浴びているバンド、WANIMA。この『Are You Coming?』が記念すべき1stフルアルバム。とにかく、抜群に曲が良い。特に、メロディが素晴らしい。メロディックパンクを軸に、レゲエ/ヒップホップといった松本健太(Vo・G)に肉体化されているサウンドが、縦横無尽に繰り出される。そこに抜群のメロディが駆け巡り、抜けの良さが半端ではない。驚くほどのクオリティの曲が13曲揃っている、破格のアルバムだ。
《ほら 振り向かず気になる方へ/過去 未来 いらない この瞬間/ほら 悩み苦しみの向こうへ/いざ 行こう 歌でも歌って/ダサいのは今だけだから》と歌う1曲目“ここから”。
そして、ラストは、《夢で逢えたら手を繋いで/諦めないでどうか耐えて/また逢える日まで》と歌う“また逢える日まで”。
松本健太が書く歌詞は、圧倒的に聴き手に向いている。この歌とメロディと歌詞でもって、聴き手と繋がるんだという切実な思いがある。たくさんの人と深く繋がることこそが音楽なんだという、生きる糧としての執着すら感じさせる。それでもって、ステージ上では満開の笑顔だ。これが、たくさんのキッズの笑い泣きを生み出す。
発売中の『ROCKIN’ON JAPAN』12月号のインタヴューで、松本健太はこう口にしている。
「遡ること3千年前の話になっちゃいますけど(笑)、楽器もなんにもない状態の時、『悲しい~』とか『嬉しい~』とかをなんか叩いたりして歌っとったと思うんですよ。野生の感覚やと思うんですよね。もうほんと初期の音楽の作り方、音楽のあり方。やっぱ俺が好きな音楽は、そういう音楽やったと思うんですよ。なんかわからんけどグッとくる!みたいな、それを信じて来たんだと思います」そして、「『究極のアンチは諦めんことや』っていうのをずっと言われて育った」ということを繰り返し口にする。
WANIMAのメロディは単なる良いメロディではなく、逆境からの生きる力がそのまんまメロディになっているような説得力がある。この根底があるからこそ、“いいから”や“1CHANCE”といったWANIMAの大きな武器であるエロの曲でもぐんぐん振り切れるし、生きることの生々しさが貫かれていて、ぐっと来る。このアルバムに入っている曲は、最近書いた曲がほとんどだというが、過去の苦難を超えて、今たくさんのキッズと一緒に泣き笑いながら、強い希望に向かっていこうとするWANIMAの「今」の最高点が詰まっている。大傑作である。(小松香里)