今週の一枚 吉井和哉『STARLIGHT』
2015.03.16 07:00
吉井和哉
『STARLIGHT』
2015年3月18日発売
最高傑作だ。
全10曲、その1曲1曲がシングル級の存在感があり、恐ろしくクオリティーが高く、それでいてシンプルでストレート。
そして吉井和哉のロック以外の何物でもない強烈な独自性がある。
吉井和哉の11年半のキャリアの果てについに実った、
100%完全無欠のロックの金字塔と呼べるアルバムだ。
素晴らしい。
YOSHII LOVINSONから始まったソロ・吉井和哉の11年半の長く曲がりくねった道のりを思うと、
さらに無限大ほどにこのアルバムの素晴らしさが胸に染みる。
これまで僕は吉井和哉のアルバムに関して、それぞれのアルバムの意義やクオリティーを賞賛しながらも必ず不満点や疑問点をぶつけてきた。
でも、今回はもうなにも言うべきことはない。ただおめでとうと言いたい。
そして吉井和哉のこれからの10年に最大の期待を寄せたい。
まるで吹っ切れたように、まるで憑き物が落ちたかのように、
どの曲もロック・ソングとしてパワフルに真っ直ぐに突き抜けている。
一つの曲が別の曲に依存していたり、曲が歌詞に依存していたり、
アルバムのテーマに依存していたり、サウンド・コンセプトに依存していたり、
これまでのアルバムに多かれ少なかれあった吉井和哉独特の「依存体質」(言いすぎていたらファンの皆さん、吉井くん、ごめんなさい)が、
今作には微塵も、無い。
どの曲も男らしく、父性をもって潔く立っている。
こんな清々しさを彼のアルバムから感じたことはこれまで一度もなかった。
具体的になにが一番変わったのか。
それは歌である。
吉井和哉のヴォーカリストとしての天性の表現力、パワー、説得力、色気が、
蛇口を全開にしたように溢れ出している。
歌が変わるということは、歌っている人間の心のありようが変わったということだと僕は思う。
このアルバムの吉井の歌は、吉井が吉井を初めて受け入れた歌だと感じる。
もっと言えば、初めて吉井和哉が吉井和哉という人間を愛した歌だと感じる。
だから、言葉一つ一つ、フレーズの一つ一つ、フェイクやトリックの部分ですら、
すべてが真っ直ぐに歌われている。
そこが、本質的にもっとも変わった点だと僕は思う。
今回、サウンドやアレンジに関してはかなりメンバーやスタッフに任せた、と吉井は語っている。
それによってずいぶんとストレートなロック・サウンドになっているが、
サウンドが変わったことよりも重要なのは、
サウンドをある程度任せることによって「歌を歌う人間としての自分」を成長させ、次元を上げたことだと思う。
だからこそ、吉井和哉のこれから次の10年がとても楽しみなのだ。
(山崎洋一郎)