≪誰かは出会って誰かは好いて/誰かは嫌って 人は人は/傷を癒して 心撫で合って/人は、人は≫(“我逢人”)どんなに傷ついたとしても、愛することを諦めないということ。大森はそういう「人」の尊さを歌詞に描き続けてきたが、その強くやさしい言葉たちが、人種や国籍のボーダーをも鮮やかに飛び越えるサウンドの上で花開いているのはかなり感慨深い。心と体がいよいよ一致し始めたこの感じが決して偶然の産物などではないのだということは『ROCKIN’ON JAPAN』5月号インタビューでのメンバーの発言を読めばよく分かる。大森は、今作を作る工程について「建築してるみたいだった。一から勉強して、一から素材集めして、みんなで分担してひとつの建物を作っていくような感じ」と言っていた。それはつまり、思い描いた理想は内側には最初からあって、それを現実世界で描くために向けてバンドは動き続けていたということ。それを踏まえて振り返ると、デビュー前から続くライブシリーズ「ゼンジン未到とロワジール」を昨年夏に開催したのもそう、EDMやビッグバンドをやったのもそう、「バンド=ロック」的な固定観念に疑問を提示し続けてきたのもそう。ミセスの活動を追ってきた人ならば特に、思い当たる節がたくさんあるのではないだろうか。伏線回収と言ってしまえば何だか華麗な手口のように聞こえるが、バンドは人で、そこに生の呼吸があるからこそすんなり行かないことだって当然ある。全13曲。こんなにも明るい響きをしているのに何だかグッときてしまうのは、5人それぞれが音楽家としての負荷を自らに課し、バンドとして足掻いてきた跡が至るところから読み取れるからなのだと思う。『ENSEMBLE』はこれまでの道のりが実を結んだからこそ生まれた傑作であり、これからのMrs. GREEN APPLEをより自由でたくましいバンドにするための初めの一手だ。(蜂須賀ちなみ)
今週の一枚 Mrs. GREEN APPLE『ENSEMBLE』
2018.04.17 12:30
≪誰かは出会って誰かは好いて/誰かは嫌って 人は人は/傷を癒して 心撫で合って/人は、人は≫(“我逢人”)どんなに傷ついたとしても、愛することを諦めないということ。大森はそういう「人」の尊さを歌詞に描き続けてきたが、その強くやさしい言葉たちが、人種や国籍のボーダーをも鮮やかに飛び越えるサウンドの上で花開いているのはかなり感慨深い。心と体がいよいよ一致し始めたこの感じが決して偶然の産物などではないのだということは『ROCKIN’ON JAPAN』5月号インタビューでのメンバーの発言を読めばよく分かる。大森は、今作を作る工程について「建築してるみたいだった。一から勉強して、一から素材集めして、みんなで分担してひとつの建物を作っていくような感じ」と言っていた。それはつまり、思い描いた理想は内側には最初からあって、それを現実世界で描くために向けてバンドは動き続けていたということ。それを踏まえて振り返ると、デビュー前から続くライブシリーズ「ゼンジン未到とロワジール」を昨年夏に開催したのもそう、EDMやビッグバンドをやったのもそう、「バンド=ロック」的な固定観念に疑問を提示し続けてきたのもそう。ミセスの活動を追ってきた人ならば特に、思い当たる節がたくさんあるのではないだろうか。伏線回収と言ってしまえば何だか華麗な手口のように聞こえるが、バンドは人で、そこに生の呼吸があるからこそすんなり行かないことだって当然ある。全13曲。こんなにも明るい響きをしているのに何だかグッときてしまうのは、5人それぞれが音楽家としての負荷を自らに課し、バンドとして足掻いてきた跡が至るところから読み取れるからなのだと思う。『ENSEMBLE』はこれまでの道のりが実を結んだからこそ生まれた傑作であり、これからのMrs. GREEN APPLEをより自由でたくましいバンドにするための初めの一手だ。(蜂須賀ちなみ)