【インタビュー】rockin'on sonicで初来日! シューゲイザーシーンの次なるライジングスター:ジャスト・マスタード――最新作『ウィ・ワー・ジャスト・ヒア』の舞台裏を語る

【インタビュー】rockin'on sonicで初来日! シューゲイザーシーンの次なるライジングスター:ジャスト・マスタード――最新作『ウィ・ワー・ジャスト・ヒア』の舞台裏を語る

アイルランド出身の5人組バンド、ジャスト・マスタードの3rdアルバム『ウィ・ワー・ジャスト・ヒア』が素晴らしい。ギラ・バンド(旧ガール・バンド)譲りのインダストリアルなパーカッションやノイズループと、ザ・キュアーを思わせる影のあるソングライティングが融合している。そしてケイティ・ボールのウィスパーボイスを完膚なきまでに活かしている。「シューゲイザー」や「インディ」の一語で片付けられない、ジャスト・マスタードにしか出せない音が鳴っている。

今回はケイティと、全体のサウンドデザインを担っているギターのデヴィットに話を聞いた。多彩な音響アプローチを試しつつ「自分たちはライブバンド」と断言する彼ら。重要なバンドとして、日本でももっと知られていい存在だ。初来日となるrockin’on sonicのステージで、彼らの独創性を確かめてほしい。

(インタビュアー:伏見瞬 rockin'on 1月号掲載) 


●今作の特徴は、何よりもケイティのボーカルの抜けの良さだと思いました。今までより声が前に出ていて、個性的で美しい声が上手く活きている。ボーカルの録音を意識したように感じました。

ケイティ・ボール(Vo、以下ケイティ)「仰るとおり、今回はボーカルを全面的に打ち出したかったんだよね」

デヴィッド・ヌーナン(G、以下デヴィッド)「そう、かなり時間をかけてボーカルに向き合った。基本的には声がダイレクトに響くようにして、逆に引っ込める場面だったり曲全体に溶け込ませる必要があるときには、どこにどうその置き場所を持っていくかを工夫していったんだ」

ケイティ「これまではボーカルも楽器と同じ扱いをしていたの。もともとエレクトロニックミュージックに影響を受けていたし。でも今回は、よりトラディショナルなソングライティングに立ち帰ろうと思った。自分的にもそっちのほうがワクワクしたんだよね。あと、ライブで歌っていく中で、もうちょっと普通に歌いやすい曲があっても良くない?みたいな気持ちもあって(笑)」

●今作はドラミングも素晴らしいと思いました。今までよりもスネアやハイハットが軽快に聞こえて、それが楽曲に合っていると感じます。

デヴィッド「ボーカルと同じように、ドラムのサウンドも引き立てていきたくて。ドラムにも曲の中心になってもらおうと思ったんだ。実際、今回はシェーン(・マグワイア、Dr)のビートから繰り出されるパターンが、楽曲の構造を左右している。彼を縛ってた手綱を手放して解放した感じかも(笑)。録音のアプローチも変えているよ。これまではアンビエントマイクを多用して、部屋の中の音響も丸ごと録るって意識だった。でも、今回はマイクをドラムの至近距離に置いて、 アンビエントマイクもルームマイクも一切使ってない。だから、よりタイトになってる。ミックスの段階でもドラムの音を前面にフィーチャーしたから、よりパンチが効いてると思うよ」

●今回は、疾走感、ドライブ感が増したと思います。BPMのそこまで速くない“OUT OF HEAVEN”でも、ダンサブルな躍動感があります。そうしたドライブ感や躍動感は、今作において意識していましたか?

デヴィッド「そうそう、鼓動がバクバクいう感じだよね。まさに今言ったドライブ感、ひたすら前進し続ける感覚を出したかった。おそらくダンスミュージックからの影響だね。踊る、興奮する、その瞬間に全身でコミットする感覚。前回のアルバムに対する反動もあるかもね。前作はけっこう内向きな、スローで重たい空気の中をひたすら前進し続ける感覚があった。対して、今回はもっと軽やかで、自由で、動きがあるよね」

●今作を作る上で、意識した作品はありますか?

デヴィッド「曲作りをしてる時期によく聴いてたのはブリアルだったりダニエル・エイヴリーだったり、わりとエレクトロニックミュージック寄りの人たち。リズムに影響出ていると思う。あとブラッド・オレンジも聴いてたし、ディーン・ブラントとジョアン・ロバートソンのアルバムもよく聴いてた」

ケイティ「『Wahalla』ね。何年も前からインスピレーションを受けてる一枚だよね」
デヴィッド「あと、やっぱりザ・キュアーは外せないよね。意識してなくても、メロディに関して確実に影響を受けてる。今回は、自分たちが受けた影響をもっと素直に出していいんじゃないかって気持ちもあった。あきらかにマイ・ブラッディ・ヴァレンタインの影響を受けてるなあって自覚する場面が今回あったけど、いいじゃん、別にそれで。マイ・ブラッディ・ヴァレンタイン、最高じゃんって感じ(笑)」

●『ウィ・ワー・ジャスト・ヒア』の曲順で、気にかけた点はありますか?

ケイティ「最初は“ENDLESS DEATHLESS”から始めようと思ってたんだけど、やっぱり“POLLYANNA”のあのベースラインで幕を開けるのがいいんじゃないかと。


“THE STEPS”を最後に持ってくる案もあったんだけど、アルバムの最初と最後で一周巡って似たような雰囲気で繋がってるのがいいなと思って、最後が“OUT OF HEAVEN”って流れになったんだよね。でも、曲順はいつもよりスムーズに決まったかな」

デヴィッド「最初から最後まで時系列で繋がってる物語じゃなくて、いろんな視点なり場面をあっちこっち行き来してる感じがすごく気に入ってるんだ。今回、始まりと終わりの曲で音楽的なトーンが似てるんだよね。かつ、どちらの曲も対話、問いかけみたいな形になっている。オープンエンドな問いかけから入って最後またオープンエンドのまま終わる流れがすごくいいと思ったんだよね」

●リリックに関してはどのような意識をもっていますか?

ケイティ「今回は歌詞とだいぶガッツリ向き合ったんだ。前はメロディありきだったけど、もっと言葉に重きを置いた。とりあえず1行だけ書くところから始めて、それからできるだけ行を重ねていくみたいなやり方で書いたの。『微妙だな』って思うことがあっても、とりあえず自分の頭に浮かんだことは全部書き出していくようにする。たとえ曲に反映されなくても、自分が何を言いたいのかを理解するきっかけになるかもしれないから」

●好きなリリシストは誰ですか?

ケイティ「PJハーヴェイ! あとカート・コバーンの歌詞が昔から好き。自分がどれだけ歌詞の内容について理解してるのかわからないけど、ぶっちぎりにいいと思わせる何かがある。そもそも私、歌詞の内容をあえて調べたりしないしね。内容がわかっちゃったら、『あ、そうなんだ』ってなって興味なくしちゃう(笑)」

●バンドを約10年続けてきた中で、目指している目標に変化はありましたか?

ケイティ「そこは全然変わってないかな。バンド始めたときは、ただ曲作りたい、ライブがしたいっていう、ほんとそれだけだった。 変化してるとしたら、今はもうちょっと欲が出てきたってとこぐらいかな……。ライブの本数を増やしたいし、今まで行ったことない国とか地域とかでも演奏してみたい。単純に、自分がそれまで知らなかった世界を見てみたい」

デヴィッド「いやもう、なんか普通にこう……音楽やりたい、みたいな(笑)。とりあえずライブやらせて、みたいな。それで言うなら日本にライブしに行くのとか、最大級の目標が実現したようなものだよ!(笑)」

●来年の日本でのライブ、大変楽しみにしています。あなたたちにとって、ライブとレコーディングの一番の違いは? ライブではどんなことを意識している?

デヴィッド「いったん曲を書いて世に送り出してからのほうが感じるものが多いんだよね。演奏する側のマインドとしては、スタジオでもライブ会場でも同じ熱量で臨むべきだと思ってる。ただ、根っこの部分はライブバンド。曲を書いてるのもライブで演奏するためだと思う。個人的にも、ライブでは観客の目を通して自分の音楽の本質を初めて知るみたいな、よりリアルに自分の音楽に触れている実感があるんだ」

●ケイティはどう?

ケイティ「とりあえず、目の前の音に集中してる感じかな。何も考えてないときのほういいパフォーマンスになるんだよね。自分が無になって完全に音楽と一体化してる状態は最高に気持ちいい」

●最後に。“WE WERE JUST HERE”のPVを日本で撮影したのはどういういきさつですか?

ケイティ「友達のグレッグ(・パーセル)がちょうど日本に長期滞在してて、『日本で撮影してPV作るのはどう?』って提案してくれたんだ。曲のタイトルは『私たちはちょうどここにいた』だけど、うちのバンドの誰一人としてまだ日本に行ったことがない(笑)。あと、今回のアルバムって場所にまつわる感覚があって、それともリンクしてる気がする」


デヴィッド「前回は地元のアイルランドで撮ったんだけど、別に地元の景色に執着しているわけじゃない。いろんな世界の国や地域を巻き込んでいくみたいな感覚で『場所』というテーマを捉えているんだ」

ケイティ「それと、東京の風景とか、あの光の感じとか、今回のアルバムで目指してたモードにぴったりだと思って。明るくてカラフルで。あんな景色、アイルランドのどこ探したってないからね(笑)みんなアイルランドの田舎町の住人なんで(笑)」



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