【10リスト】チャットモンチー、一生聴き続けられる名曲10はこれだ!

【10リスト】チャットモンチー、一生聴き続けられる名曲10はこれだ!
2018年の7月をもって完結するチャットモンチー。2005年に多くの人に衝撃をもたらしたデビュー当時から、阿波弁を話すまだあどけなさの残る女の子3人は、ステージでは獰猛なほどのひとつの塊だった。衝動と好奇心と真面目さをエンジンにスタートからフルスロットルで駆け抜けながら、その時々でチャーミングかつフレッシュな驚きをもたらす珠玉の名曲たちを次々と生み出す、唯一無二のロックバンドとして歩み続けた。その発明品とも宝物とも呼ぶべき楽曲たちは、これからも私たちの心の中で消えることはないだろう。完結までの残りの時間ではラストワンマンとなる日本武道館公演や「チャットモンチーの徳島こなそんそんフェス2018 ~みな、おいでなしてよ!~」なども発表され、まだまだ大きな美しい花火を打ち上げてくれるはず。その前にチャットモンチーのこれまでの歩みを振り返りながら、彼女たちの楽曲の魅力を再確認しておこう。(上野三樹)


① ハナノユメ

後にファーストアルバム『耳鳴り』にも収録されているが、ミニアルバム『chatmonchy has come』の1曲目として、この曲でチャットモンチーとの出会いを果たしたという人も多いことだろう。その衝撃たるや。徳島出身の女性ロックバンド、という前情報と、何だか3人姉妹みたいな彼女たちの佇まいから想像できただろうか。《薄い紙で指を切って》という日常の何でもないワンシーンから始まる、地球規模のアクロバティックな大サーカスと言わんばかりの物語と旋律が、オルタナティブかつポップなアレンジと共に溢れ出す。歌詞の斬新さ、唸るように唄うギターリフ、上品なコーラスワーク……チャットモンチーならではの発明が詰まった1曲。デビュー当時、本人たちに感動を伝えたら高橋久美子(Dr.・Cho/2011年9月に脱退)に「ほんまに紙で指を切ったんですよね〜」とのんびり言われて拍子抜けしたことを覚えている。


② 恋愛スピリッツ

2006年6月にリリースされたセカンドシングル曲にして、冒頭約45秒がアカペラという大胆なアレンジによる“恋愛スピリッツ”。ファーストアルバム『耳鳴り』のレコーディングで最後に仕上がったこの曲は、当初、アカペラが長いためラジオなどでオンエアされるだろうかといった懸念があったそうだが、結果的にチャットモンチーが鳴らす女子の内面の凄みを緊迫感を持って伝えきり、音楽関係者もリスナーも彼女たちに更なる期待!というよりむしろ降参!という感じ。もともと橋本絵莉子(G・Vo・Synthesizer)が高校3年生の時に作詞・作曲したというが、あなたが好きだ、という気持ちをただ伝えたいはずなのに《どうか無意味なものにならないでね》だったり《あの人を見ないで》と心の叫びを綴ったひたむきな歌声は、チャットモンチーという生き物の純潔さと女性としての気高さ、そして強さを恐ろしいほど感じさせるものだった。この時期は橋本のノイジーなギターを前面に押し出し、福岡晃子(B・Dr・Cho・Synthesizer・Percussion etc.)と高橋によるリズムが更に鋭さを添えるようなアンサンブルが特徴的。フジテレビ系『HEY!HEY!HEY! MUSIC CHAMP』のエンディングテーマにもなり、お茶の間にも徐々に広まっていく。


③ シャングリラ

サードシングル曲“シャングリラ”はシングルチャートで初のトップ10入りを果たし、この曲でテレビ出演なども行うようになり、チャットモンチーを取り巻く環境を大きく変えた。楽しく踊れるような曲調も取り入れてライブを意識し、それぞれの音がユニークに絡み合うような3ピースバンドならではの良さを追求。まさにセカンドアルバム『生命力』の時期を象徴するような1曲に仕上がった。彼女たちはこの時代、まだ夏フェスが一般的なブームになる前の、初期段階の盛り上がりを華やかに彩りながら熱狂の中を駆け抜けていく。多くの人がチャットモンチーを一目観たいとステージに訪れ、イントロで高橋のドラムが四つ打ちを刻み、福岡のベースがダンサブルに絡んで“シャングリラ”が始まった時の、あのワクワクと高揚感は今でも忘れられない。


④ とび魚のバタフライ

《ブルー ブルー ブルー ブルー/ブルー ブルー ホワイト ブルー》という福岡によるイマジネーション豊かな歌詞を、見事に飛翔させる橋本のメロディが爽やかな“とび魚のバタフライ”。途中のパパンパンの手拍子や、ギターとベースを弾きながらステップを踏むメンバーのステージングなども楽しさ全開。夏フェスやツアーなどで年間70本を超えるライブをこなしていた当時のチャットモンチーはバンドとして確実にタフな風格を放つようになった。だからこそ、まるで絵本みたいな世界観を持ちポップに振り切れるこの曲も、かわいいだけじゃ終わらない説得力をもって届けることができた。シリアスムードな名曲“世界が終わる夜に”との両A面だったことも含め、あらゆる方向に幅を広げていくチャットモンチーの進化と3人それぞれのクリエイティビティは圧巻。終盤のコーラスワークも美しい。


⑤ 橙

更なる進化を遂げたセカンドアルバム『生命力』において、橋本絵莉子が高校時代に作詞・作曲した楽曲が2曲収録されており、それが“橙”と“ミカヅキ”である。曲順的にも真ん中と最後という重要な位置にあり、進化を遂げようとも変わらない核のように存在していた。特に“橙”は自分自身と向き合う内省的な歌詞と、ミニマムな世界観ながら緻密に練られたアンサンブル、気迫に満ちた歌声が聴く者の心を震わせた。何より、高校時代から破壊力抜群の表現力と、その根源にある怒りにも似た激情を抱えていたのかと思うと、あらためて橋本絵莉子というアーティストのとんでもない才能が浮き彫りに。しかし《ゼアイズナッシンアイキャンドゥーフォーユー》といった英詞のカタカナ表記と発音が上手い具合に気が抜けた感じで絶妙。


⑥ 風吹けば恋

日本武道館2daysを大成功に収めるなど怒涛の快進撃を続けるチャットモンチーから届けられた8枚目のシングル曲が“風吹けば恋”。この疾走感溢れる爽やかなロックチューンは当時、堀北真希が出演する資生堂「SEA BREEZE」のCMソングに起用された。自分を変えたくて駆け出す主人公を、ギターサウンドが後押しして、まさに《走り出した足が止まらない》ほどの大きな躍動感を生み出していく。当時の取材では福岡が「今は何をやってもチャットモンチーらしくなる自信がある」と語りながらも「だけど、そこに留まったらいかんなとも思ってる」と、常に新しいことに挑戦する意志をこの頃から持って活動していた。とてもキャッチーで人懐っこさもある曲だが間奏のアレンジなど洗練されたグルーヴ感がある。


⑦ 染まるよ

橋本絵莉子、福岡晃子、高橋久美子、この3人の優れた作詞家がひとつのバンドにいることもチャットモンチーの奇跡だったわけだが、中でも“染まるよ”は福岡のペンによる真骨頂とも呼べる1曲。“世界が終わる夜に”や“Last Love Letter”などもそうだが、女性の本音シリーズともいうべき名曲たちを、ちょっとヘビーでアンニュイなムードと鋭い視点で生み出していく。特にこの頃、映画やCMなどのタイアップも多く、その中で色んな刺激を受けながらクリエイティビティを開花させていった印象。暗い夜道をひとりで歩いているような密やかなイントロ、「煙草」をモチーフにした大人っぽいアプローチだが《わたしより好きな煙草》という、女の子の拗ねたような切ない感情がじわじわと押し寄せるような曲展開。そして曲の終盤《でも もう いら ない》を合図にその想いが決壊する。上手くいかない恋のモヤモヤとした気持ちにどっぷり浸れる曲に仕上がっており、“シャングリラ”で一般認知が広がった彼女たちはこの頃「同世代の子たちにも聴いて欲しい」という気持ちがあったが、それを見事に叶えるにふさわしい曲だった。


⑧ 8cmのピンヒール

3枚目のアルバム『告白』の1曲目を飾るのが、“8cmのピンヒール”。当時の写真を見ると急に大人びて洗練された印象の3人がいて、メジャーデビューから全力で駆け抜けていた彼女たちが様々な経験を経て色んなことを考えながら、更なる変化を求めていた時期である。“8cmのピンヒール”というタイトルからすでに背伸び感があるが、この曲は当時25〜26歳だった彼女たちの等身大の恋愛ソングともいえる。シンプルなアレンジながら堂々たるチャットモンチーらしさを湛えており、何より、このタイトル部分のメロディがインパクト大で一度聴いたら忘れられない。転んでも痛くてもいいからピンヒールで駆けるひたむきな女心を清々しいバンドサウンドで鳴らしている。


⑨ 満月に吠えろ

高橋久美子脱退後、初のシングル。チャットモンチーのすごいところは2人体制になっても歩みを止めなかったことだし、福岡がベーシストからドラマーになることさえも厭わずに前に進んだこと、そしてそれを心から楽しんだこと。2人体制でやっていくことを決めた時、すぐに思いついたのがこの“満月に吠えろ”というタイトルだったという。《この歌をとめるな》という歌詞にもあるとおり、当時のふたりのリアルな、そしてバンドマンとしての本能の叫びのような1曲。新たな衝動と新たなエンジンを搭載したようなふたりがかわるがわる色んな楽器を担当しながらライブを繰り広げる当時のステージはこれまでのチャットモンチーにはない面白さと興奮があったが、そのど真ん中にはやっぱり歌があるということ、そこには何ら変わりはないことをこの曲が証明している。


⑩ いたちごっこ

2人体制となり初のオリジナルアルバム『変身』リリース後、橋本が結婚および妊娠を発表。1年余りのブランクの後、サポートメンバーに恒岡章と下村亮介を迎えての新体制が発表され、約2年ぶりにリリースされたのがシングル『こころとあたま / いたちごっこ』。“いたちごっこ”はイントロからチャーミングな鍵盤の音色がフィーチャーされた、ふんわりと軽やかな曲調で、MVでは女優の吉岡里帆がリズミカルに歩く姿もばっちりハマッている。しかし橋本が書いた歌詞は東京や音楽シーン、もっと大きくいうとこの時代に対するアンチテーゼ。高校時代から、本人は無自覚だったかもしれないが彼女の原動力は腹の底に渦巻く怒りだったし、それがチャットモンチーのロックの核の部分を担っていた。《うたいたいうたが/なくなっていくのが/こわいだけなんだよ》と高らかに歌い上げ、だからこそまだまだチャットモンチーは続いていくんだという宣誓のように思えた。その後もロックバンドとしてユーモアと勇敢さ溢れる変化を遂げながら活動を続けてきたチャットモンチー。彼女たちらしい完結をきっと見せてくれるだろう。


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