①don’t cry anymore
2010年3月3日、当時大学生だった19歳のmiwaはシングル『don’t cry anymore』でメジャーデビューを果たした。アコースティックギターの弾き語りスタイルで音楽活動を行っていた彼女だが、豪快にしてダイナミックなバンドアレンジが施された音源はもとより、曲調においてもロックなアタック感が発揮されている。信じていたものが揺らぎ、感情を掻き乱される青春の心象を《ギリギリだって 一人きりだって/負けたくないの 冗談じゃないわ》と歌い上げた。強靭な意志と背中合わせになった、内に秘めた脆さの描写もリアルだ。②chAngE
TVアニメ『BLEACH』のオープニングテーマに起用され、miwaの名をより幅広い層に知らしめることになった3rdシングル曲。《chAngE 何度でも 生まれ変わるの/悲しみも抱きしめて 走り出すよ》というフックが鋭く迸るロックチューンである。「A(アコースティック)からE(エレクトリック)への変化」の意図が込められたタイトルにも窺える通り、MVの中のmiwaはギブソンのジョーン・ジェット・ブラックハートを携えて熱いリードギターを弾き倒している。まさに有言実行、自身に弛まぬ成長・変化を課す姿勢がサウンド面にも表れた楽曲だ。③片想い
バンド編成のライブツアーとアコギ弾き語りツアーを繰り広げながら活躍の場を増やしていたmiwaが、2ndアルバム『guitarium』リリースに先駆けて2012年2月にリリースした珠玉のラブバラード。全編にわたって率直な思いを澱みなく運び、壮麗なアレンジを潜り抜けてくる珠玉のメロディは、miwaのソングライターとしての力量をまざまざと見せつけている。幼少期から学んでいたピアノもまた、miwaの大切な表現ツールだ。MVには演奏シーンが収められている。④ヒカリヘ
《溢れる想い 愛は君を照らす光になれる》。多くのファンの思いを吸収し放射するようにして、miwaは若きシンガーソングライター/ギター女子から膨大なエネルギーを振りまくアーティストへと成長を遂げていった。光の化身かと見紛うような存在感を発揮し始めたのが、シングル曲“ヒカリヘ”からアルバム『Delight』へと向かう時期だ。シンセのリフレインが鳴り響く力強いダンスポップの曲調さえ追い越してゆくような、凛とした意志の煌めきを宿した一曲。シングルリリースの翌年にあたる2013年末、miwaはこの“ヒカリヘ”で『第64回NHK紅白歌合戦』への出場を果たした。⑤ミラクル
親密なホームパーティーのような賑々しさと、夏の高揚感に後押しされる恋心。《いちご味のかき氷 溶ける頃に切ない想い》といったキュートな歌詞まで詰め込んで、ポップアーティストとしてのmiwaの魅力が全方位的に網羅されてしまったナンバーが、このシングル曲“ミラクル”だ。ライブではmiwa自らが振付で踊りながら歌い、インタラクティブなエンターテインメントの時間を生み出す楽曲にもなった。移ろいゆく季節の中で、瞬間瞬間を目一杯謳歌するために人々の背中を押すナンバーである。⑥君に出会えたから
《一瞬のキラメキ 永遠じゃないからこそ/忘れないよ》。テーマ的にも“ミラクル”の妹分のような楽曲だが、“ミラクル”がサルソウル風なら“君に出会えたから”は強力なサンバビートを用いたパーティーチューン。チャントの如き熱いコーラスも織り込まれ、初見のフェス客だろうがお構いなしに壮観なタオル回しの当事者へと仕立て上げてしまう。自らが変化・成長し続ける存在だからこそ、miwaは儚く移ろいゆく時間や、いつかは鳴り止んでしまう音楽を慈しむ術を知っている。享楽の中でしか見つけることのできない、宝物のような体験だ。⑦We are the light
俳優業への取り組みや、音楽面では「第83回NHK全国学校音楽コンクール」課題曲“結 -ゆい-”の提供、また国内外ソングライターとの共作など、活躍がより多角的になっていった2010年代後半。TVドラマのエンディングテーマとなった2017年のシングル曲“We are the light”は、互いに照らし照らされる人間関係に光を見出しながら活動してきたmiwaの大きなテーマが、明確なメッセージとして結実した楽曲になった。作詞・作曲のコライトにher0ismとTova Litvinを迎え、同時代的なビート感覚に乗せて《“誰もが誰かの光”》と思いを伝える。拳を突き上げながら熱唱するmiwaの姿に、多くの人が心を揺さぶられてきたはずだ。⑧DAITAN!
2018年夏に初のベスト盤『miwa THE BEST』を発表したあと、デビュー以来のトレードマークだった前髪揃えのロングヘアから快活なショートヘアへとビジュアルイメージを一新したmiwa。新たなフェーズを迎え、2020年のシングル曲“DAITAN!”はTVドラマ『妖怪シェアハウス』の主題歌となったが、タイトルに偽りなし、大胆不敵なソングライティング(miwa、NAOKI-T、jamによる共作)が炸裂した一曲である。“FRiDAY-MA-MAGiC”や“ストレスフリー”の発展形と呼ぶべき反骨の女子メンタリティが迸る曲調だが、こんなふうにタガが外れたパンキッシュな作風の時こそ、miwaは最もチャーミングである。⑨Sparkle
ベスト盤を挟み、前作『SPLASH☆WORLD』からは実に5年ぶりとなった通算6作目のオリジナルアルバム『Sparkle』(制作自体は2年ほど前に完了していたという)。その表題曲でありオープニングトラックでもある“Sparkle”は、miwaとher0ismによる共作曲。フューチャーベース風のトラックに乗せて、《何度も越えてきたあの日々が背中を押す/いつだって僕らには立ち上がる理由があるんだ》と歌い出される。成長や変化には、迷いや苦悩が付き纏うものだ。歩んできた道のりを振り返り、新たなフェーズに相応しい言葉とサウンドを探しながら、miwaはまたもやこんなふうにフレッシュな、気高い意志の迸りを掴み取ってみせたのである。⑩あたりまえに
2022年8月、miwaはキャリア初となるEP『君に恋したときから』を発表した。ラブソングにフォーカスした作風であり、同作にも収録された“あたりまえに”は先行してデジタルリリースされていた楽曲。空間系エフェクトの効いた夢見心地なサウンドスケープの中、miwaは《好きなときに好きなように/笑って君と過ごす日常を》と歌う。外部ソングライター/プロデューサーたちとの共作を通して斬新な視界を探り続けていた時期の、miwa単独による堂々たるグッドメロディ。そして何よりも、ソウルフルで切々としたボーカルの節回しが素晴らしい一曲だ。現在発売中の『ROCKIN'ON JAPAN』7月号にmiwaが登場!
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