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    今週の一枚 スプーン

    今週の一枚 スプーン

    スプーン
    『ゼイ・ウォント・マイ・ソウル』


    全米10位となった6作目の『ガ・ガ・ガ・ガ・ガ』(2007年)は、
    90年代USインディー/オルタナの血筋を引く彼らにとっては時代的にぎりぎりセーフの出世作だった。
    もう少し遅かったら、2000年代後半の新世代インディー勢の新たな勢いに埋もれて出世の機会を失っていただろうと思う。
    それから一作『トランスファレンス』をリリースして、今作はそこからさらに4年ぶり。
    さてどうなるかと思っていたが、これはもう絶賛するしかないでしょう。

    一言で言えば「余裕の攻撃」の一作。
    90年代USインディー/オルタナ・ロックの見事な完成品であると同時に、
    今の10年代的な「ポップ化」とは一線を画した「あくまでもロックとして」の進化を提示した作品でもある。
    レイドバックでもなく悪あがきでもない、スプーンらしい堂々とした攻めの作品だ。
    それをデイヴ・フリッドマンとジョー・チカレリという90年代人脈のプロデューサーとともに作ったというのも筋を通していてスプーンらしい。

    元々の楽曲のがっしりとした地力、豊かなバリエーション、大胆な
    アレンジのアイデアの数々−−−
    いつもながらさすがである。
    そこに新たにデイヴ・フリッドマン独特の音の生々しい手触りが加わり、ジョー・チカレリが手がけた曲にはメジャー感が加わっている。

    90年代USインディー/オルタナの感性とスキルが洗練されて、まるでクラシック・ロックのように一つの明確な美学として高いレベルで確立されている。
    スプーンという、オルタナでもあるが極めて職人的でもあるバンドにとって、
    この展開は大正解だと僕には思える。
    山崎洋一郎の「総編集長日記」の最新記事
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