『メディアとしてのロックン・ロール 渋谷陽一評論集』上下巻刊行について伝えたいこと

『メディアとしてのロックン・ロール 渋谷陽一評論集』上下巻刊行について伝えたいこと

rockin'on編集部日記をご覧の皆さん、ロッキング・オンの海津です。
このブログに投稿するのは初めてになります。
私、ロッキング・オン・ホールディングスの社長をやっておりまして、プレイヤーとしては弊社のフェスのプロデューサーをやっております。
そんな自分が何故rockin'on編集部ブログに初投稿するかというと、
6月9日に刊行される渋谷陽一最後の単行本『メディアとしてのロックン・ロール』上下巻の編集を担当したからになります。

ロッキング・オンに入社して20年目になりますが、もともと相当な熱量のロッキング・オン読者でした。初めて買ったのが1977年のロバート・プラント表紙号で中学2年生の時でしたが、今でも会社の自分の部屋に置いてあります。
だから、この本を読んでくれるであろう渋谷陽一に強い影響を受けた読者の皆さんを代表してこの編集をさせて貰った、という気持ちが強いです。
この数ヶ月間、53年分の原稿をひたすら読み返して、それを1000ページに収めていく作業は困難を極めました。リアルタイムで読んでいた当時を思い出して、しばし手を止めて読み耽ってしまうことが何度もありました。悩みながら行ったテキストの選出理由は様々です。批評軸のオリジナリティー、普遍性、影響力、筆者の対象への思い入れ、時代的価値等々。

上巻(1972-1996)は自ずと既発の単行本3冊からのセレクトが大部分となりましたが、その『音楽が終ったあとに』『ロック微分法』『ロックはどうして時代から逃れられないのか』には未収録のテキストも5篇加えております。3000部の同人誌だったロッキング・オンが洋楽ナンバーワン雑誌になり、そして邦楽誌、カルチャー誌を次々と創刊していく、そんな時代のドキュメントとして、そしてレッド・ツェッぺリンからプリンスまで20世紀のロックとポップ・ミュージックを時に主観的に時に体系的に語る、日本の音楽メディア史においてとても重要な一冊です。

下巻(1997-2025)は、すべてが初出以来はじめてまとめられるテキストになります。総合誌の創刊、大規模ロック・フェスのオーガナイズをはじめ数多くの事業を立ち上げた21世紀の渋谷陽一は実業家モードでもありました。だから本書にはロッキング・オン誌に書いた本文原稿だけでなく、総合誌サイトに書いた政治評、美術誌サイト・アートに書いた美術論、日本経済新聞に連載していたライブ評、そしてフェスの開催メッセージなど多様なテキストを掲載しており、いかに後年の渋谷の守備範囲が多岐に渡っていたかが判ると思います。渋谷陽一フォロワーにとって待ちに待った一冊と言えるでしょう。

上下巻1000ページを通してあらためて感じられるのは、渋谷陽一の原稿を書く動機が常に怒りから生まれていることです。揺れ動く音楽シーン、激動の時代、変質していく社会、それに対して常に当事者として向き合うからこそ生まれる怒り。そのスイッチが入った時が批評家・渋谷陽一の本領であり、この上下巻の読後に感じられるのは渋谷陽一の視点というフィルターを通して顕になるこの半世紀です。
発売は一週間後の6月9日(火)になります。期待してお待ちください。
(海津亮)




『メディアとしてのロックン・ロール 渋谷陽一評論集 1972-1996』
版型:四六判 初版発行日:2026/6/9発売 ISBN:978-4-86052-141-7
ページ数:512ページ 定価:2200円(税込)

『メディアとしてのロックン・ロール 渋谷陽一評論集 1997-2025』
版型:四六判 初版発行日:2026/6/9発売 ISBN:978-4-86052-142-4
ページ数:504 ページ 定価:2200円(税込)


【上巻】
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【下巻】
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