彼らの歴史は2017年3月からスタートしており、メンバーは、もっさ(Vo・G)、藤田さん(B)の女性2人と、朝日(G)、カズマ・タケイ(Dr)の男性2人による男女混成。この時点で気付く方も多いかと思うが、もっさ以外の3人はバンド・コンテンポラリーな生活でも活動しており、さらに朝日は「石風呂」の名でボカロPとしても活動中。そんな4人は2017年8月から精力的にライブ活動をスタートさせ、ライブ会場限定1stデモシングル『タイフー！』、わずか4ヶ月で1,000枚を売り上げた2ndデモシングル『だけじゃないBABY』を次々とリリースし、今年5月の3rdデモシングル『オシャレ大作戦』のリリースを経て、12月に初の全国流通盤『ONE!』を発表――という流れが現在までの彼らの経歴だ。今回の全国流通に至るまでコンポラでの活躍が後ろ盾になっていた部分も少なからずあるとは思うが、バンドが上っていく階段は過去の経歴だけで上がってこられるような簡単なものではないし、彼ら4人のバランスの良さが素晴らしいからこそ開けた道だ。
そんなバンドの大きな魅力のひとつに、ファンの一部からは「ハム太郎ボイス」と呼ばれ親しまれているもっさの歌声がある。幼く拙くハイトーンなその声はまさに「可愛い女の子」そのものだし、純粋無垢な愛嬌も兼ね揃えているその声に惹きつけられた人も多いはずだ。作詞作曲を手掛ける朝日もその歌声に惚れ込みバンドに誘ったという話もあり、彼女の存在がネクライトーキーの大きなピースを担っていることは間違いない。
そして前述したようなキュートな声色を持つもっさが歌うのは、ポップでキャッチーなメロディをなぞるように仕立て上げられた、歌詞に忍ばせられている憂いやヘイトな感情だ。“オシャレ大作戦”での《ちょっとオシャレでしょ？／反吐が出るなあ》や《最低な言葉も覚えたよ／友だちと笑い合うための言葉だぜ》(“涙を拭いて”)という鋭いフレーズをあどけない声で歌われた時の感覚は、幼い子供に笑顔で真意を突かれたかのような「ギクっ」とするものだった。だからといってメロと歌詞のどちらかの力が強いわけではなく、可愛らしさと悲観的感情が絡み合うからこそ生まれる現実味や説得力が確かにあって、そのバランスの取り方の上手さや皮肉の忍ばせ方の秀逸さは流石だなと恐れ入る。
「誰かの意見に賛同するフリをしてでも、自身の意見を抑えて平穏を保つ」という意識を持った人はもしかしたら多いのかもしれない。そしてきっと「それは時代のせいだ」とか「誰かのせいだ」とかそんなことを叫びたいのではなく、そうやって誰かのせいにしてしまいそうになる自分を、自分自身が一番変えてあげたいと思っているはずだ。ネクライトーキーの音楽はそんな思いを「救う」というよりは、もっと近い位置で同調してくれる音と言葉をくれる。例え作り笑って誰かにへつらう日があったとしても、自分が思っていることは誤魔化さずに大事にしてあげるべきだ――彼らが放つ音からは、そんなエールが聞こえてくる。12月のリリースをきっかけに、彼らはさらに活躍の場を広げていくだろう。今後の活躍が楽しみだ。（峯岸利恵）
