──『ヤニねこ』のエンディングテーマ“煙とブルー”を表題にしたEPですが、朝日くんは2024年10月の時点で「主題歌やりたい」ということをXで投稿していて。つまり、もともと『ヤニねこ』の大ファンだったわけだよね。朝日 そう。言ってみるもんだなと思いますねえ(笑)。もともと作者さんと相互フォローだったんですよ。『ヤニねこ』の作者は「にゃんにゃんファクトリー」っていう漫画家集団なんですけど、そのうちのひとりがネクライトーキーを好きでいてくれてて。そういうのもあったと思うんですけど、本当にちゃんといいバンドだなと思ってくれてたんだなっていうのが嬉しいですね。藤田(B) 私も『ヤニねこ』は知ってて、それこそXで連載し始めたタイミングとかから見てたんで……いいのか?って思っちゃいましたけどね。──「いいのか?」って?藤田 まず、『ヤニねこ』をアニメ化していいのかっていう(笑)。それをもっさが歌うのか?と思って。でも逆に面白いんじゃないかなって思いました。結果、反応もよさそうなので嬉しいです。もっさ(Vo・G) そう、私もアニメ観たんですけど、だいぶ、その……汚いものも出てくるんですけど、観たあとにこの曲が流れるとちょっとスカッとする感じに、相対的になってる感じがします。もしかしてこれが『ヤニねこ』のエンディングじゃなかったらまたちょっと違った印象だったのかなと思います。泥臭い感じで作ったつもりなんですけど、『ヤニねこ』のあとだと相対的にスカッとする感じがする。朝日 曲の泥臭さを向こうがヤニ臭さで上回ってきた(笑)。──朝日くんから見た『ヤニねこ』の魅力っていうのはどういうところなんですか?朝日 これは今アニメを観ている人とは差があるかもしれないと思うんですけど、俺の中では『ヤニねこ』ってもう群像劇になってるんです。登場人物がめちゃくちゃ増えてきて、それぞれに関係があって。ヤニカス(主人公・ヤニ子のこと)だけじゃなくて、夢を追ってる人とか、仕事に追われてる人とか、仕事がうまくいかない人とか、タバコさえ吸えてればいいやつとか、そういうのがぐちゃぐちゃになって、普段喋ってないこいつとこいつが喋ったらまたなんかちょっと面白いなみたいなのがいっぱい出てくる、群像劇的な面白さになってきてるんで。だからここからアニメが続いていったら、どんどんこの“煙とブルー”がしっくりハマるようになってくるんじゃないのかなって思ってます。──その群像劇のどういうところに感情移入するんですか?朝日 俺は結構、単純に登場人物が多い漫画、アニメ、映画が結構好きなんです。三谷幸喜とか『パルプ・フィクション』みたいな、あいつとあいつがここでなんかごちゃごちゃやって、それがこう繋がる、みたいなのが。その中で、『ヤニねこ』には万事快調みたいなやつがいないんですよ。すべてにおいてうまくいってるやつみたいなのが。それでもみんなわりと面白おかしく生きていっているのが、めちゃくちゃ気持ちいいなと思うんです。でもその中に漫画家の人がいたりとか、10代でまだ夢に指先も引っかかってないみたいな子がいたりとか、そういうのもちゃんと描けるのが一辺倒じゃなくていいなっていう。この極端な下品なギャグ漫画の中でたまにブルースみたいな渋さが出てくるのがまた面白くて。そういう渋さにも感情移入したりしますね。『ヤニねこ』には万事快調みたいなやつがいないんですよ。それでもみんな面白おかしく生きていっているのが気持ちいい(朝日)
──“煙とブルー”という曲は、すごく『ヤニねこ』に共感してるんだろうな、愛情を注いでるんだろうなっていうのがわかる曲なんですけど、同時にすごく朝日臭がするというか、めちゃくちゃ重なる部分があるんだなっていうのも思ったんですよね。すごく自分に近いところに、この作品の世界観みたいなのを感じることができてたんだろうなという。朝日 めちゃくちゃそうだと思います。ハマりました。タイアップ曲って、それをタイアップだと知らない人が聴いてもちゃんと「いいな」って言ってもらえる曲にはしたいと思ってるんですよ。でも今回はそれを意識する暇もないぐらいナチュラルにハマりましたね。──みなさんはこの曲を受け取って、第一印象としてはどんなことを感じました?中村郁香(Key) なんか、最初に聴いたときから、ちょっとバカっぽい感じで──。朝日 バカっぽい感じだった?中村 そう、最初はね。デモを聴いたときはバカっぽい曲を作ろうって思ってやってたんですけど、歌詞で日常の人間がよく思う感情とかが書かれてて、自分もよく同じことを思ったりするから、普段の日常に寄り添った曲でいいなって。結構気に入ってます。カズマ・タケイ(Dr) 最初のデモをもらったときは、結構弾いてて気持ちいい曲だなって思いました。テンポもそこまで速くないけど、ノリもよさそうだし、でもそんなにガツガツ行く感じじゃないっていう。今までにあるようでなかった曲だなって。──なんか、自然体でストレートって感じがするんですよね。朝日 そうですね。たぶんそれを俺は『ヤニねこ』に感じたんだと思います。飾らずに生きるというか。シンプルに飾らずやってるという部分に、もしかしたら『ヤニねこ』ともっさの重なりを見たのかもしれない。もっさ え……朝日じゃなくて?──どうですか。重なってますか。もっさ そうなんだ、って今びっくりしました(笑)。私は、自分から形を合わせにいったわけじゃないのに、うまいことお互いがありのままでハマったんだなっていう感覚だったんですけど。──ふたりの共通する部分みたいなところにハマったみたいな感じなのかもね。そういえば朝日くんが東京で借りた作業部屋のアパートもそれこそ『ヤニねこ』ばりに変なところらしいじゃないですか。朝日 すごいですよ。この前なんか、電源のコンセントがガタガタで、挿そうと思って押し込んだら向こうに落ちそうになって。だから頑張って押さえながら挿さなきゃいけないんですけど、たぶんそこからちょくちょく虫が入ってきてる。中村 えー……。朝日 近くで便所虫みたいなのが死んでて。もっさ ちゃんと管理会社に直してもらいなよ。朝日 そう、それがいいと思う(笑)。でもそこに住んでるから書けたのかもしれない。なんか曲ができるんですよ、あの部屋は。──だから出所に近いんでしょうね、朝日っていう人の。タケイ 原点に。藤田 劣悪な環境に置けば置くほど朝日が出てくる(笑)。朝日 そう。昔、派遣バイトのときとか、トイレ行くふりして携帯にボイスメモを入れて、それで“だけじゃないBABY”とか作ったから。──そういうのが『ヤニねこ』と共鳴する部分でもあったんだと思うんですよ。ヤニ子が住んでいるアパートもたいがいだからね。朝日 でも見た感じ、あっちのほうが俺の東京の仕事部屋よりちょっと広い。『ヤニねこ』以下です。劣悪な環境に置けば置くほど朝日が出てくる(笑)(藤田)
──この曲の歌詞ってすごく、そのしみったれた世界観が出てると思うんです。でもこの曲、最終的にはちょっとポジティブな方向に向かうじゃないですか。《まだ少しはやれそう》とか《また明日会いましょ》とか。そういう感じはどこから出てきたんだと思いますか?朝日 実は、今回のEPの3曲目の“風がただ吹いている”が──これ、2020年くらいにはあった曲で、1コーラスだけ作っていたんですよね。で、ネクライトーキーには結構しみったれた歌詞が多い中で、この曲の歌詞はすごい燦然と輝いていたんですよ。強く吹く向かい風に向かって立ってる感じがして。で、ずっと気になってたんですよ。それで今回ちょっとこいつをEPに入れてみようって話になったんですけど、そのときに、せっかくこいつが立ってくれてるんだから他の曲もちゃんと前を向ける曲にしてみたいなという思いが出てきたんです。だから、6年前のこの子が、実はEP全体の指標になってるんです。──“風がただ吹いている”を書いたときはどういう気分だったんですか?中村 6年前って、まだコロナ禍が始まったばかりじゃないですか。朝日 “だれかとぼくら”とか作ってハイになってた頃かな。なんか風が……帆船ってあるじゃないですか。あれって向かい風のときがいちばん進むらしいんですよ。コロナっていう強い風で、「もう、やったらあ」の感情がたぶん吹き荒れてたんだと思います。逆境に立ってたから。だからそういう頃の俺のメッセージを今6年経ってバンと受けて、また背筋をピンとしてできたのが他の曲って感じだと思います。──当時は世の中としても大きな逆風が吹いている中だったからこそ──。朝日 そう、ヤケでもいいから言い切りたい、みたいな気持ちだったのかもしれない。でもコロナの時期だったこととかは忘れてたんで、単純に今この曲が、ネクライトーキーを聴いてくれる人の気分をよくしてくれたらいいなと素直に思って。世に出さないのはちょっともったいないなと思ったので、選ばれたという形です。意外と珍しいんですよ、デモが復活することってなかなかないので。もっさ 私、この曲めっちゃ気に入ってて。最初のときもデモで歌ってて、そのときからめちゃくちゃいい曲だし、これが世に出ないのはもったいないなってずっと思ってて、朝日さんにも「あの風の曲どうしてる?」って訊き続けていたんです。今6年も前だって聞いてびっくりしたんですけど、その間ずっとそうやって言い続けられるぐらいの曲だったんだなって思います。中村 当時集まる機会がないから家で録って送って、くっつけてもらった記憶があって。だから「あ、生き返った」みたいな気持ちにもなります。──6年越しだったからこそ、ここまでいい曲になった感じもしますね。朝日 確かに。仮定の話にはなりますけど、昔完成させるより、今のほうが絶対よくできたと思います。