林萌々子(Vo・G)、ぴか(B・Cho)、美咲(Dr・Cho)の3人による大阪出身のガールズバンド・Hump Back。林を中心に2009年に結成されながらも長らくメンバーが安定することがなかったバンドではあるが、2016年に現在の3人になった今、「WELL BUCKET RECORDS」に所属しながら全国各所で行われているフェスやイベントに出演。さらにチャットモンチーのトリビュート盤の参加アーティストに抜擢されるなど、その活動を着々と広げている。
「上手くいかないことばっかりだな」と独り言を呟いてしまうような日というのは恐らく誰にでもあるはずだ。そういう時に聴きたくなる曲を考えてみると(勿論一概に括ることはできないが)、心境とは正反対の明るさで励ましてもらいたくなるというよりは、同じ温度感でするっと溶け込んでくれる曲であることが多い。《あぁ、なんか飽きてきたんだ/あぁ、ちょっと疲れが溜まってるんだ/暮らしは良くはならない/髪でも切りにいこうぜ!》(“月まで”)――「例えやさぐれた瞬間があってもそれはそれで良いし、その想いを否定することはない。ただ、自分の気持ちをコントロールできるのは結局のところ自分だけだから、まぁ気を楽にしてちょっとずつ動けばいいんじゃない?」というようなメッセージがこのフレーズから伝わってくるような気がするし、自身の内側からぽろっと零れた本音を脚色したり誇張したりせずに歌うそんな彼女たちの曲を聴いて「ああ、同じなんだなぁ」と思って前向きになる。ネガティブを否定しない、けれど擁護するわけではない。無理にポジティブに振り切り誰かを励ますこともしないが、いつだって希望は持っている。Hump Backはそんな唄を、過度に飾ることのないシンプルで胸を打つメロディに乗せて歌っている。
そしてそういった曲から感じられる凛とした強さは、前述したようにメンバーの入れ替わりが多く、例え自分ひとりになろうとも「Hump Back」という屋号を一心に守り抜いてきた林自身の一本芯の通った性格があってこそ生まれるものなのだろう。以前彼女たちにインタビューをしたことがあるのだが(『ROCKIN’ON JAPAN』2018年7月号掲載)、その中で美咲とぴかは、林のそういったスタンスに惹かれたと話していたし、彼女たちの会話の節々から垣間見える「誰かに何かを伝えたい」というベクトルで音楽と向き合うことはせずに「芽生えた感情とそれを音楽にすることに正直でいる」という一貫した姿勢がとても印象的だった。「諦めない」という確固たる意志は美談として語られることが多いが、それは当事者ではない私たちが「結果」のみを知った上で語るからこそであって、当事者からすれば「美談」の一言で片づけるにはあまりにも辛くて苦しい瞬間が幾度となくあったはずだ。その荒波を何年も超えてきたHump Backだからこそ宿せる想いというのは絶対にあって、その強さに憧れ、惹かれ、尊敬できるからこそ、彼女たちの楽曲は多くの人に届くようになったのだろう。
そんなバンドの性格はライブからも強く伝わってくるし、ライブハウスで生まれ育ってきた彼女たちのアクトからは「ガールズバンド」という総称から想像できるような煌びやかさや柔らかさを一切感じない「ロックバンド」としての図太く真っ直ぐなバンド精神を感じる。《僕だっていつか/あのヒーローみたいに歌えるかな》(“ヒーロー”)――彼女たちの唄や音、そして放つ熱を浴びては励まされ前を向くことができる人は私含めて多いはずだし、これからもっともっと増えていくだろう。ライブハウスで生きるガールズヒーローの躍進から、是非とも目を離さないでいてほしい。(峯岸利恵)
【知りたい】新たなガールズヒーロー、Hump Backが飾らず真っ直ぐに歌う理由
2018.07.27 16:15