U2が、バンド結成50周年のその日に、母校とダブリンのストリートでサプライズライブを決行。その祝祭をダブリンで観た

U2が、バンド結成50周年のその日に、母校とダブリンのストリートでサプライズライブを決行。その祝祭をダブリンで観た - pic by Akemi Nakamurapic by Akemi Nakamura

ひとつ前のブログで紹介したように、1976年9月、当時14歳だったラリー・マレン・Jr.が、ダブリンのマウント・テンプル・コンプリヘンシブ・スクールの掲示板に「ドラマー、バンド結成のためメンバー求む」と手書きのメモを貼った。そして1976年9月25日、その呼びかけに応じたメンバーがラリーの自宅のキッチンに集まり、後のU2となるバンドが始動した。そして、それからちょうど50年となる2026年9月25日。
なんとU2が、その原点であるマウント・テンプル・コンプリヘンシブ・スクールでサプライズライブを行ったのだ。さらにその後は、ダブリンの目抜き通りにして、バスキングのメッカでもあるグラフトン・ストリートへ。
バルコニーから再びサプライズライブを行った。自分たちが始まった場所に戻り、そこからダブリンの街へ。
自分たちの原点をたどるようなライブで、ダブリン市民とともに盛大に50周年を祝ったU2。その祝祭をダブリンで観た。今後また詳しく紹介する機会があると思うので、今回は短くまとめたい。⚫︎マウント・テンプル・コンプリヘンシブ・スクールにて
U2が、バンド結成50周年のその日に、母校とダブリンのストリートでサプライズライブを決行。その祝祭をダブリンで観た - U2/1977年 にMount TempleでパフォーマンスU2/1977年 にMount Templeでパフォーマンス
U2が、バンド結成50周年のその日に、母校とダブリンのストリートでサプライズライブを決行。その祝祭をダブリンで観た - pic by Rich Furypic by Rich Fury
ダブリンの中心地から車で20分ほど行った場所にある、彼らの母校。
私たち世界中からの記者を乗せた車が着いた頃には、噂を聞きつけた近所の人たちで、高校の前は大賑わい。すでにメンバーは到着していたようで、地元メディアのインタビューに答えたり、学生と一緒に写真を撮ったりと、ほのぼのとした光景が見られた。

ライブが開始したのは午後2時ごろ。それまで授業が終わった学生が少しずつ出てきて、母校のヒーローを見るためにステージ前へ早歩きで向かう姿に、なんとも胸がキュンときた。
会場には約900人が集まった。U2が彼らくらいの年齢だった時のことを想像せずにはいられなかった。おそらく2、3曲くらいやるのではと思っていたのだけど、結果的にはなんと計7曲。
当初は6曲の予定だったのだが、学生たちから「もう1曲! もう1曲!」のコールが止まなかったため、アンコールで再び登場。約40分のライブを行った。会場に流れていたアリス・クーパーの“School’s Out”が止まると、メンバーがステージに登場し、学生たちはそれぞれが手にしたカードを掲げて大歓声。
ボノは、「俺たちは実験室から脱出したんだ。この実験、うまくいってるかな?」と冗談まじりに開口一番言った。この学校は当時、共学、多宗派の実験的な学校でもあったそうだ。ジ・エッジのギターリフが高らかに鳴り響くと、1曲目は“I Will Follow”。彼らも高校時代にライブを行ったこの学校で、デビュー作『BOY』の1曲目から始まった。“Vertigo”では、「ウノ! ドス! トレ!」とカウントしたあと、「スペイン語は俺から習わない方がいいよ!」と笑わせた。最新作では、アルバム・タイトルのスペイン語をはじめ、MVのメキシコ撮影など、ラテンカルチャーが大きなインスピレーションとなっている。“Vertigo”のみならず、今回のセットリストも、ヒット曲を中心にしつつ、最新作のモードを伝える内容になっているように思う。“Beautiful Day”では、エルボーの“One Day Like This”を交えて演奏。
1979年のデビューEP『Three』収録の“Out of Control”では、ボノがラリーを、50年前に学校の掲示板に「バンド結成のためメンバー求む」というメモを貼った人物として紹介。そこから世界最大のロック・バンドのひとつにまでなってしまったことは、高校生たちにとって大きなインスピレーションとなったのではないだろうか。またラリーは、バンドがラスベガスのスフィアでレジデンシーを行った際には、治療に専念するため参加していなかった。この日、完全復活を目撃できたことも大きかった。
さらに、バンド紹介の際に当時のクラス名を言ったのが、なんともほのぼのとした。「ラリーは2I」「アダムは5D」、そして「ジ・エッジは3U」。ボノは何組だったのかも気になる。
リリースされたばかりの新曲“Silencio”は、際立つパンク・ソング。「この曲は俺たちの新しいロックンロールの45回転盤だ」と紹介。
「45回転なら、2分半で何回転できる? 112.5回転。それはかなりのrevolution(=回転と革命のダブルミーニング)だ」と語り、2分半に凝縮したエネルギーの爆発を見せた。また、ここではザ・ビートルズの“Twist and Shout”も交えて演奏。
本編の最後となった“One”では、ステージ横に座っていた学生たちがストリングスで参加。
彼らはMusic Generationの若い弦楽器奏者で、アイルランド島32郡を1人ずつ代表する32人。ボノはこの場でMusic Generationの活動を称え、また自分たちに影響を与えた高校時代の教師たちに敬意を表した。会場では、学生たちが自然に肩を組んで曲に聴き入っていた。
U2が、バンド結成50周年のその日に、母校とダブリンのストリートでサプライズライブを決行。その祝祭をダブリンで観た - pic by Akemi Nakamurapic by Akemi Nakamura
ここで終わりのはずだったが、鳴り止まない歓声に応えて、“With or Without You”というU2を代表する曲を、「じゃあ、ちょっとした曲をやろう」と始めた。このアレンジでは今まで演奏したことがないとも語っていた。最後に再び大歓声を受けて、「来てくれてありがとう。まあ、君たちは他に行くところないだろうけど(笑)」と冗談で締めくくった。50周年をその原点で、これから未来を背負う学生たちの前で祝うという、過去と未来が共存するような、なんとも感慨深いイベントとなった。
U2が、バンド結成50周年のその日に、母校とダブリンのストリートでサプライズライブを決行。その祝祭をダブリンで観た - pic by Rich Furypic by Rich Fury
セットリスト1. I Will Follow2. Vertigo 3. Beautiful Day 4. Out of Control 5. Silencio 6. One encore7. With or Without You ⚫︎グラフトン・ストリートでゲリラライブ
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そして続けて、午後6時半過ぎから、ダブリンの目抜き通りにしてバスキングのメッカであるグラフトン・ストリートへ。Bewley’s Grafton Street Cafeのバルコニーから、再びサプライズライブを行った。しかし、サプライズのはずが、どういうわけか噂を聞きつけたファンが午後2時くらいから会場前に集まり始めていたという。私たちが到着した際には、もうストリートはぎゅうぎゅう。待っている間に、U2の歌をみんなで合唱するような場面もあった。
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ボノは後のインタビューで、「まるでW杯に優勝したみたいだった」と喜びを表現していたが、こちらのライブは約1時間にも及んだ。セットリストは、再び“I Will Follow”に始まり、高校で演奏した曲はすべて披露。明らかに演奏はこちらの方がさらによくなっていた。時々、ボノがバルコニーから身を乗り出すので、勢い余って落ちないか心配になるような場面すらあった。
U2が、バンド結成50周年のその日に、母校とダブリンのストリートでサプライズライブを決行。その祝祭をダブリンで観た - pic by Rich Furypic by Rich Fury
“One”では、プリンスの“Purple Rain”も交えて演奏。また、ハイライトのひとつとなったのは、亡くなったグレン・ハンサードへの追悼だった。ボノがバルコニーからストリートを指して、「僕がグレン・ハンサードが歌っているのを見たのは、本当にこのストリートのすぐそこだった」と語り、ここではエッジが美しい高音を響かせる、感動的な“Falling Slowly”をパフォーマンス。観客も聴き入り、彼を惜しむ大きな拍手が起きた。
“Vertigo”で締めくくられたかと思ったのだが、ファンがもう1曲やってほしいと、“40”を歌い始めると、ボノが「それはいいね」と応じ、そのまま“40”を演奏。ストリートでの約1時間のライブを終了した。50周年を、その原点である学校で高校生たちの前で祝い、その後はストリートで、観光客も、地元市民も、熱狂的なファンも交えて、街中をその音楽でひとつにしたU2。これ以上ない50周年の祝祭であり、同時に新作の出発点にもなったのだと思う。最新作『Carnaval De Luz』(邦題:光の祝祭~カルナバル・デ・ルス)の発売は、11月13日。
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