3つのうちふたつは、山中拓也(Vo・G)の口から飛び出たこと。ひとつ目は、アリーナ会場でもスタンディングエリアを用意して、ライブハウスと同じようなライブをやること。椅子席にはホールライブが好きなお客さんたちも座っていて、スタンディングエリアではライブハウスと変わらない景色が見られる、そんな彼らにとっての理想のライブ空間を作ること。ふたつ目は後輩にも夢を見せること。山中の言い方で言うと「捻くれたロック」でもアリーナ会場でライブができることを自分たちが知らしめることで、後輩たちのロックシーンもどんどんと盛り上がっていくこと。3つ目は中西雅哉(Dr)の口から出た夢で、いつかオーラルチームとファンのみんなのチームで野球をやること。
夢を語る人はこんなにもキラキラしているのだと、ステージ上の彼らを見ていて思った。THE ORAL CIGARETTESは夢を見るバンドだ。もちろん現実も直視したうえで。現実を深く見つめるからこそ、彼らは本当の意味で夢を語り得るのだろう。他人任せで何かを求めているだけでは終われないし、「足りない足りない」と嘆いているだけでも終われないから。そんな彼らの美しさとリアルさを痛感したライブだった。(以下、本誌記事に続く)
文=天野史彬 撮影=Ryotaro Kawashima、SHOTARO
(『ROCKIN'ON JAPAN』2025年6月号より抜粋)
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