インタビュー=杉浦美恵 撮影=三浦大輝
──「東京」を体現する、非常に内容の濃いアルバムができあがりました。「最近J-POP好きなんだよね」っていうアメリカ人とかが、日本のイケてる音楽をもっと知りたいっていう時に「東京ってこういう感じ」というのをレペゼン……じゃなくて、プレゼンできるものにしたくて(SKY-HI)
SKY-HI 東京っていろんなものが混ざるじゃないですか。世界ではアンダーグラウンドなものが日本ではめちゃくちゃオーバーグラウンドになったり、逆に世界ではオーバーグラウンドなものが日本ではアンダーグラウンドだったり、それが全部混ざってるのが「東京」ですよね。その概念をアルバムの形で提示したかったんです。わかりやすく言えば「最近J-POP好きなんだよね」っていうアメリカ人とかが、日本のイケてる音楽をもっと知りたいっていう時に「東京ってこういう感じ」というのをレペゼン……じゃなくて、プレゼンできるものにしたくて。
──レペゼンでなくプレゼン。まさに。
Novel Core レペゼンじゃなくてプレゼンは、俺、“81 Bars”ですでに言ってます(笑)。
SKY-HI そうだ! Coreのリリックにあった。めっちゃそうじゃん。だからしっくりきたのか。
──Coreさんはこのアルバムが完成して、今BMSG POSSEとはどんなものだと感じていますか?
Novel Core こうやって音楽性も全然違うソロアーティストが一緒にワークすると、自分自身の立ち位置がよりはっきりするという感覚がありますね。ソロでは自分が何者なのかというのをプレゼンスとして示さないといけないんですが、5人でいると意識しなくても自分像がちゃんと見えるので、自然とめっちゃキャラクターが立つっていう。すごくいい現象だなと思ってます。
──“MINNA BLING BLING”などはその最たる曲ですよね。5人の個性が混ざり合いつつ、それぞれの遊び心が炸裂していて。特にedhiiiさんのレイジ感のあるラップに引き込まれます。
edhiii boi “MINNA BLING BLING”は、結構ノリでいったような感覚でしたけど、リリックを書き始めるとやっぱり真剣になる部分があったり、逆にサビは抜いていこうって考えたり。僕はそういうメリハリをPOSSEでは大事にしています。バースではちゃんと言いたいことを込めて、けどフロウはめっちゃふざけまくろうと、最後はめっちゃ遊んでます。
Aile The Shota あのフロウを遊んでるって言うけど、edhiiiが言ってる「遊ぶ」は、それこそラップやってる人とか音楽やってる人からしてもかなり高度な遊びなのよ。あれを遊んでるフロウって言われちゃうと食らっちゃうレベル。天才。
──REIKOさんのボーカルの柔らかさもあの曲では際立っていますね。
REIKO さっきCoreくんが言った、自分が自分らしくいるだけで個性が立つという現象──僕はBMSG POSSEでその現象に救われて、“MINNA BLING BLING”ではそれをいちばん体感しました。
──REIKOさんは数ヶ月前は「自分がどうすれば輝けるのか」を自問しているところだと言っていましたが、その答えが少し掴めた感じですか?
REIKO 少しどころではないです。4人がいちばん気づいてると思うんですけど、それこそ力を抜くところと、しっかり作品に没頭するところ、その瞬間をスイッチできるようになったことで、自分は殻を破って輝けるようになったと思います。POSSEでの活動が始まってからは、自分のこれからがすごく楽しみになりました。今は早く次のステージに立ちたいです。
SKY-HI そうだよね。今のREIKOのソロステージめっちゃ観たいわ。
──ひとりでいると迷いそうなことも、ここに戻ってみると、何を目指していたのか、何が楽しいのか、すごくよくわかるということですね。「ああ、俺もめっちゃ窮屈だったな」とか「しんどかったな」とかいうことを、人ごとなんだけど自分ごととして捉えて解決するために作った会社がBMSGで、自分はそれに救われた(Novel Core)
REIKO めちゃめちゃ見えますね。で、さっき違う取材で話してたんですけど、「edhiiiはトー横キッズを救う」っていう話があって。
SKY-HI 「トー横の救世主」ね。
REIKO edhiiiがそれなら僕は「サードカルチャーキッズのヒーロー」になれればいいなって思いました。サードカルチャーキッズは、自分の両親が持っている文化と自分が育った環境で育まれた文化、その両方を体で感じながら生きる子どものことを指すんですけど、それはまさに自分のことで。日本で育ったので中身ほぼ日本人なんですけど、幼い頃から第一言語はフィリピンのタガログ語だし、家ではフィリピン料理を食べて育ってきたし──という状況が当たり前で生きているということもあなたのオリジナルな色なんだよって、BMSG POSSEでは気づかされたんです。だから僕自身もそれを伝えられるヒーローになりたいなって。
──edhiiiさんがトー横キッズを救うというのはどんな文脈から出たんですか?
edhiii boi 自分自身がすごい寂しがりで孤独とずっと戦ってて、トー横キッズに対してどこか近いものを感じるっていうか。よくトー横を通るんですけど、自分よりも少し年下の子たちがいて、めっちゃ自由に楽しんでる子もいるけど、本当にもう「終わった」みたいな顔してる子もいて。自分自身もそうだったし、なんなら今もその感情は続いているからこそ、その思いごと一緒に抱きかかえて、いつか「それを愛してあげましょう」っていう歌を、キッズに伝えられたらいいなって思います。今は自分も、この4人のおかげで更生できていて……。
──え、更生?
Aile The Shota BMSG POSSEのサブテーマは「edhiii boi更生プログラム」だって言ってたんですよ。本人は認めたがらなかったんですけど。でもついにedhiii自身の口から出たね(笑)。そう、成長プログラムなんだよね。
SKY-HI BMSGが大切にしたいことってすごく善性が強いんだよね。今は一段落ついたけど、冷笑系が流行ったりとか、ネガティブな歌が流行る時代って本当はよくないよねって話をしていて。それで言うと、最近こっちのけんととかが流行ってて、その空気ってすごくいいなって。僕らもこの時代に必要な価値観を提示するということを大事にしたいと思ったし、それをPOSSEとして提示する前に、edhiiiがedhiiiのステージで、REIKOがREIKOのステージで、もちろんCoreもShotaも俺も、それぞれのステージで救うべき人を救っていけるようなイメージがある。そういう部分で影響し合っているのがPOSSE。だからedhiiiの教育には結果としていい環境な気がする。
Novel Core 逃げるとか、負けるとか、それをすごくネガティブに捉える風潮ってどうしてもあるんだけど、僕たちはそういう人たちへの応援歌を歌いたいという思いもあるんですよね。「逃げる」が最強の攻撃コマンドだったりする時もあるし。自分たちもそういう時があったからこそ、僕らはちゃんと歌にしていけるというか。
Aile The Shota ソロでもそうだけど、自分ごとの歌も、ちゃんと人ごとにしたいんですよ。聴いてくれた人の歌になるように。そういう感覚はずっとあって。
SKY-HI わかる。でも人ごとが自分ごとになる感覚もあるよね。Coreが“SHIKATO!!!”歌ってんのを後ろから見る時とか、edhiiiが“おともだち”歌ってんのを横から見てる時とか。“SHIKATO!!!”や“おともだち”が自分の曲になることって本来ないはずだけど、あの瞬間は自分の曲になる感覚があるんだよね。
Novel Core 人ごとが自分ごとになるって、そもそも始まりがそれだったかも。日本中、世界中にいる自分みたいな人に向けて、「ああ、俺もめっちゃ窮屈だったな」とか「しんどかったな」とかいうことを、人ごとなんだけど自分ごととして捉えて解決するために作った会社がBMSGで、自分はそれに救われたし。自分も同じような奴がいたらそいつに手を差し伸べられるアーティストになろう、ヒーローになろうと意識的に動き出したのが僕たちのアーティストキャリアの始まりで。