『HANA』。ついに届けられた、ファーストアルバムのタイトルだ。自らの名を冠するということ──つまりこれは、自己定義の宣言である。一体、HANAとはなんなのか。彼女たちはこの時代に、何を果たしているのか。
2020年代前半、日本のポップミュージックの地図は急速に塗り替えられた。とりわけダンス&ボーカルグループの隆盛は顕著で、従来「アイドル」と総称されてきた文脈とは似て非なるジャンルが、独自の市場と審美眼を形成していった。その大きな契機となったのが、K-POP型制作の本格的な流入である。楽曲・ダンス・ビジュアルを分業と統括によって緻密に組み上げるシステム、鍛錬されたパフォーマンス、そして何よりサウンドと世界観の完成度を最優先に置く姿勢。そこでは、世界基準で戦えるクオリティの高さそのものが存在理由となる。一方で、サバイバル番組文化は物語消費を加速させた。練習生の成長、葛藤、友情、競争──そのプロセスが可視化され、オーディエンスは単なる受け手ではなく参加者として機能する。応援すること自体がコンテンツ化され、熱狂は継続的に再生産される構造が整った。さらに興味深いのは、そうした「完成度」と「物語」が高度化する中で、再び日本的アイドル文化が別の角度から息を吹き返したことだ。いわゆるカワラボ(KAWAII LAB.)系に代表されるグループたちは、「かわいい」を再定義し、「正解のないかわいい」「一人ひとり皆がかわいい」という価値観を拡散させた。そこでは、空気感やキャラクターの愛嬌が主戦場となる。強さを誇示するのではなく、等身大の自己肯定を共有することが中心に置かれているのだ。
完成度至上主義と、軽やかなかわいさ。そのふたつの価値観が並走する現在のシーンにおいて、HANAは、実はどちらにも完全には属さない。なぜなら、彼女たちが前面に出しているのは、それ以上に「どんな人間として表舞台に立つか」という姿勢であるからだ。(以下、本誌記事に続く)
文=つやちゃん
(『ROCKIN'ON JAPAN』2026年4月号より抜粋)
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