anoの2ndアルバム『BONE BORN BOMB』。端的に言えば、「あのちゃん」がアーティストanoとしてやりたいこと、そしてやるべきことがハッキリしたアルバムだと思う。絶対的に「自分は絶対だな」みたいな自信がある。音楽から逃げなくなったから
feat.もカバーもセルフカバーも収録されているし、たくさんのタイアップ曲を通していろんな世界を歌っているのに決して散漫な印象はなく、全12曲に超濃厚な「あの」がみっちみちに詰まっている。ソングライティングの主導権を自分で握り始めたことも大きく影響していると思うが、決してそれだけではない。このアルバムが「あの」でいっぱいなのは、あのがあのであることを諦めずに戦い続けてきた格闘のしるしが、歌詞にもメロディにもアレンジにも生々しく刻み込まれているからだ。
変だと言われた唯一無二の声は歌唱力と表現力にますます磨きをかけ、“絶絶絶絶対聖域”のようなオルタナティブロックも“愛してる、なんてね。”のようなバキバキの打ち込みトラックもすべて「ポップ」に光り輝かせ、押しつけられる「普通」に抗う生き方は自ら綴る言葉たちにただならぬ説得力を与える。アルバムの最後を飾る“Past die Future”でanoは《僕だけの武器突き刺して 愛も血も晒して/地獄から生き上がってやるんだ》と叫ぶ。誠実に生き続けてきた人間だけが辿り着ける美しい痛みに満ちた音楽の世界の中で、偏見をなぎ払い誹謗中傷を踏み潰しながら、anoはひとりで立っているのだ──同じくたったひとりであるあなたに向かって手を広げながら。
そしてその場所は、アーティストとして覚悟を決めたanoの第二章のスタート地点に過ぎない。あのちゃんとは、タレントであり俳優であり声優でもあり、そして何よりも誰よりも、生きることの本質とポップスの魔法を体現する特別なアーティストだということが、『BONE BORN BOMB』という傑作アルバムとこのインタビューでの自身に溢れた言葉に熱く迸っている。
インタビュー=畑雄介 撮影=KIZEN
(『ROCKIN'ON JAPAN』2025年7月号より抜粋)
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