今、「あのちゃん」という存在のあり方が変わりつつある。過去の経験だったり生まれ持ったものだったり、いろんな呪いがあると思うんです。
でも、それがあって今の自分がいるわけだから、呪いはといてほしくない。
僕は呪いを呪いたいんです
これまでのあのは活動のフィールドをどんどん広げていくことで、言わば自分を起点にして存在を拡張してきたように思うが、最近のあのはanoとして届ける「歌」を通して、もはや世の中そのものを自分の表現へと引き寄せながら、そのメッセージを巨大化させている。世の中──それはつまり「あなた」の暮らしや人生そのものだ。あのは今、自分の輪郭の中にあなたも取り込みながら、世の中を丸ごと抱き締める包容力のある存在へと変化している。
9月4日にリリースされた新曲“KILL LOVE”“ミッドナイト全部大丈夫”は、まさにその象徴のような曲だ。そこには、拭い去れない孤独や許せない自分を抱えたあの自身の生き様だけでなく、別の人生を歩みながらも同じ魂を持つあなたの声も息づいている。あのが自分に向けて放つ「大丈夫」という言葉は、あなたのことも「大丈夫」に変えていく。その歌の力は、ライブというリアルな場所──自身初となる日本武道館公演でも鮮やかに証明されていた。
“KILL LOVE”“ミッドナイト全部大丈夫”が収録されたシングルと武道館公演につけられたのは、「呪いをかけて、まぼろしをといて。」という謎めいたタイトル。多様な解釈の余地を残しながら、今の「あのちゃん」のあり方を的確に映し出す言葉だと思う。この特集では、新曲インタビューと武道館のレポートを通して、「呪い」と「まぼろし」に込められた意味、そして「あのちゃん」という存在の現在地を明らかにしていく。
インタビュー=畑雄介 撮影=岩澤高雄
(『ROCKIN'ON JAPAN』2025年11月号より抜粋)
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