悲しすぎる恋愛の歌は、美しさを生み出す。そしてその悲しみと美しさが一定のレベルを超えて極まった時に、その歌は静かな狂気のようなものを孕む。聴いていると感情が揺れるのではなく感情が崩壊する。涙が溢れるのではなくて全身に鳥肌が立つ。そこまでに達する「悲しみの歌」はそう数多くはない。悲しみと美しさを保ったまま、聴く者に狂気を垣間見せるほどの歌を生み出すには、表現に対する強い執念と、高い技術を要する。偶然やはずみでは絶対にできない。「正しいだけの清水依与吏とかマジ反吐出るわ」って。
くそったれで汚い自分を味わいながら、でも美味しいものしか作りたくなかった
“冬と春”はそんな歌だ。
《枯れたはずの枝に積もった/雪 咲いて見えたのは/あなたも同じだとばかり/嗚呼/春がそっと雪を溶かして/今 見せてくれたのは/選ばれなかっただけの私》というサビで歌われる情景が突きつけるのは、“ハッピーエンド”で《青いまま枯れてゆく》私よりももっと残酷で救われない冷たい悲しみだ。
昨年リリースされたアルバム『ユーモア』を経て、そしてドームツアーを経て、なぜback numberはこの光景にたどり着いたのか。今回、独占インタビューという形で清水依与吏がこの曲のすべてを語ってくれた。
インタビュー=山崎洋一郎 撮影=中野敬久
(『ROCKIN'ON JAPAN』2024年3月号より抜粋)
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