宇宙にも深海にも、過去にも未来にも探しに行ったけど、この世界に仲間なんかひとりもいなかった。
だからこれは、仲間を探すのをやめるって決めたアルバムって感じかな
PEOPLE 1の2ndアルバム『星巡り、君に金星』について、バンドのすべてのクリエイティブを手掛けるDeuは、はっきりと「失敗作だ」と言っている。「本当はこのセカンドの段階で、トラックもメッセージも、もう何段階かクオリティを追求できた」と。しかし、この作品が2024年のベストアルバムのひとつであるのは、現段階でもう確定的だろう。なぜなら『星巡り、君に金星』は、大衆の中でこそ浮き彫りになる私たちの孤独を受け止めて、「人はみなひとりである」という希望を与えてくれる、現代のポップアルバムだからだ。
切れ味鋭いグルーミーな音像から一聴してノレるアッパーなリズムまで。緻密に練り上げた分厚い音像から3人だけで鳴らすむき出しのバンドサウンドまで――その変幻自在なアプローチもまた、PEOPLE 1というバンドの多彩さの表れであり、同時に、Deuという人間の唯一性の証明の旅路でもあった。「唯一性」とはつまり、「オリジナル」であるからして「孤独」ということだ。人々の中に入ってこそ自分は違うと思い知り、誰かと見つめ合って手を繋いでなお、わかりあえないと悟った――隅から隅まで歩いた果てに消えることはなかったその孤独を、受け入れると腹を括るまでの14曲。それは当人にとっては寂しく切ない旅路だっただろうが、大衆とはそういう孤独な人間の集合体であるという事実は、薄っぺらな連帯よりもよっぽど私たちに安心をくれる。これを希望と呼ばずしてなんと呼べばいいだろう。
PEOPLE 1。Deu、Ito、Takeuchiという3人の人間の「実験」の日々は、ふとした孤独に苛まれる人々をきっとこれからも救っていくのだろう。その結実であり、マイルストーンとなる一枚を紡いだこの2年について、3人にじっくりと話を聞いた。
インタビュー=安田季那子 撮影=刈馬健太
(『ROCKIN'ON JAPAN』2024年3月号より抜粋)
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