ザ・ビートルズ『ラバー・ソウル』60周年。永遠の名盤『ラバー・ソウル』その真価を今解き明かすーー

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現在発売中のロッキング・オン7月号では、ザ・ビートルズの『ラバー・ソウル』の論考を掲載!
以下、本記事の冒頭部分より。



「ディランのボーカルにはリバーブやディレイが掛けられず、それが独特の親密さを与えていた。ビートルズは、新しい曲にはこうしたサウンドが相応しいと考えたんだ」(エンジニア:リチャード・ボズワース)


「『ラバー・ソウル』は、我々がそれまで生きていた音楽の世界と、今現在も生きている音楽世界との分水嶺になったアルバムなんだ」(アンドリュー・ルーグ・オールダム)
『ラバー・ソウル』というタイトルを提案したのはポール・マッカートニーだった。そこには長年強い影響力を誇っていたブラックミュージックと、白人ミュージシャンたちとの関わり方を茶化す意図が込められていたのだ。「ラバー・ソウル(ゴム製のソウル=安っぽい、まがいもののソウルミュージック)」とは、1960年代の半ばに某黒人ミュージシャンが、ストーンズのミック・ジャガーの歌い方を評した表現だった。

 65年にザ・ビートルズが行なった“アイム・ダウン”のレコーディングセッションのあるテイク――後に『アンソロジー2』に収録された――では、マッカートニーがこう呟いている。「似非ソウル(plastic soul)だよ、ね、似非ソウルだ」

「こんにち我々はザ・ビートルズという壮大なる叙事詩を、驚異的な勢いで駆け抜けて行ったひとつの航跡として捉えているところがあるね。実際何もかもが文字通り目まぐるしく、僅か8年から9年の間に矢継ぎ早に起こったわけなんだけど」、作家のダニエル・ワイズマンは言う。「しかしよくよくつぶさに検証してみると、『ラバー・ソウル』の前のビートルズにはある種、そこはかとなく、しゃかりきで突っ走って来た蓄積疲労でスタミナ切れを起こし、推進力を失い始めたような雰囲気があった。とは言え、誰が彼らを責められるだろう? 彼らがもう少しでも精神的に脆かったなら、ビートルマニアは4人を狂気の地獄へと突き進ませたかも知れないんだ。『ビートルズ・フォー・セール』、そして『ヘルプ!』――収録曲はいずれも秀逸だけど、そこには殆ど目に見えないアイデンティティクライシスがじわじわ作用していて、もっと何かないかという手探り状態が伝わってくる。こことは別のもっと美しくない世界だったら、バンドはその時点でもうタオルを投げ入れていたのじゃないだろうか。そしてだからこそ、『ラバー・ソウル』はあれほどまでに奇跡的な作品になったわけで――あれは単なる一枚のアルバムではなく、自分たちは決して後には退かないという決意表明なんだ。彼らは余分なものを全て削ぎ落とし、それまで持ち味としていたキュートさを封印し、内省によって若さを過去へと押しやる準備を整えた。彼らはまだ目指すところに到達していないけれど、プロットはより緻密さを増していった――つまり『ラバー・ソウル』は、ザ・ビートルズの第二幕、物語の一番いいところの第一章なんだ」

「何と魅力的で柔軟性に富んだタイトルであることか!」と、オーストラリア在住の音楽歴史家であり作家のリッチー・ヨークは言う。「これが作品全体を完璧な遠近法で捉えさせることになっているわけだよ。クリエイティビティは成長するものであり、それが如実に表れている。『ラバー・ソウル』で我々が目にするのは、ジョン・レノンの創作の心臓部と化した獣が牽引力を増し、その才能をあまねく自在に発揮していく様子だ。その目撃者となれた我々はどれほどの僥倖に浴していたことだろう。その時代に立ち会えたわけだからね。この素晴らしいアルバムは私たちの多くに、この若者たちが単に偉大なR&B楽曲のたどたどしいカバーを何とかやりこなすだけに留まらず、もっと凄いことをやり遂げる可能性に満ちているのだと気づかせるきっかけをくれたんだ」

(以下、本誌記事へ続く)



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