『ROCKIN'ON JAPAN』最新号(2020年10月号)New Comerより
出る杭は打たれる、というのは今に始まった話ではないけれど、夢や理想に向かってひたむきに進もうとするには、どうにも生き難い時代である。SNSは他者との繋がりをもたらしてくれるが、同調意識を盾に冷や水をかけたり足を引っ張りあったり、互いが互いを監視するような恐ろしいツールにも成り得る。
それは身近で大切な人が、理解や心配を抱きながら伝えてくれる思いとはまったく意味の異なる、無責任でエゴイスティックで臆病な意識の集合体だ。夢や理想を抱いて生きようとする人ほど、冷めたふりを上手に着こなし、孤独感をさらに募らせなければならないのが、我々の生きる現実である。
2017年に京都で結成された3ピース、Hakubiは、今どき奇跡的と思えるくらいにひたむきで凛としたサウンドとメッセージを伝えるバンドだ。傍目には透き通ったガラス玉のように映るその魂には、きっと無数の細かな傷がつけられているに違いない。昨年に初の全国流通盤となるEP『光芒』を放ち、ライブシーンでも目覚ましい活躍を見せてきた(本来なら、今年も各地大規模フェスで注目度をさらに高めるはずだった)が、この9月9日には、「一歩を踏み出す決意」というテーマを3つの楽曲にそれぞれ異なる角度で落とし込んだ『結 ep』がリリースされる。
『華丸大吉・千鳥のテッパンいただきます!』EDテーマに採用された先行曲“ハジマリ”も収録された本作だが、片桐(Vo・G)による芯の強い美声と、無防備なほど衒いのないグッドメロディが伝うナンバー“22”が素晴らしい。《どこか冷めたふりしたまま/諦められず大人になってた》という赤裸々な告白に始まり、迷いながら生きる傷だらけの魂を晒して、それでも身近な、大切な人との距離感をしっかりと見定めている。
前作EP『追憶』に収録された“17”は、そもそも片桐がソロで歌っていた曲だったが、“22”は彼女がひたむきさを見失わずに生きてきた時間を伝えていて、信頼感を高めてくれる。これからもHakubiのロックは、孤独に傷つきながら生きる夢追い人たちに、寄り添っていくのだろう。(小池宏和)
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Hakubi、傷だらけの美しい魂が夢追い人たちを照らす
2020.09.08 12:00