イエローカード

ブラック・アイド・ピーズ『THE E.N.D』
2009年06月03日発売
ALBUM
ブラック・アイド・ピーズ THE E.N.D
反則技、というのがブラック・アイド・ピーズがここまで市民権を得た理由だと勝手に思っている。元々は生バンドをバックに、2MCであたたかみのあるヒップホップをやるユニットだったが、レーベルの不運もあって、その頃は目覚しいセールスを上げることはできなかった。しかし、ウィル・アイ・アムのMCとしての多彩なスタイルと器用さ、それとポップネスへの強い意志によって、ある種なんでもありという状況を自ら作り出し、ファーギーが加入して一発目の『エレファンク』で、そのポップネスが爆発したと思っている。非常にアイドルちっくなところもあったし、すごく綱渡り的なところもあったのだけど、曲の力と絶妙なバランス感覚で押し倒してきた。リリースされるやいなや全米1位となった本作の先行シングル“ブン・ブン・パウ”もいい意味でいい加減さがあって気にいっていた。

なので、トラックリストもスタッフクレジットも収録曲数も分からない厳戒態勢のなか、期待を募らせて音を聴かせてもらったのだけど、正直どうなのだろうと思ってしまった。全編エレクトロを導入した大変化作ということだが、ディプロやスウィッチのフィジェット・ハウスをなぞっていたり、ファーギーがM.I.A.のフロウをそのまま使っていたり、ちょっと違和感があった。まあ、昔からそういうとこはあった人達だが、遊び心やキレという点でも、エレクトロの比重が大き過ぎて、減退してしまったように見える。反則技が好きだったのだけど、それはこういうことじゃない気がする。(古川琢也)
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