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「おそろしい」より「おどろおどろしい」、「怪しい」より「妖しい」歌声である――Adoによる“ゲゲゲの鬼太郎”を聴いて、そう思った。クラシックもジャズもロックもなんでもござれな不朽のメロディではあるが、技巧的には誰にでも歌える“ゲゲゲ〜”。どんな難曲もウルトラCで歌いこなすAdoからしたら役不足と言っていいかもしれない。しかし弘法筆を選ばずというか、曲がシンプルだからこそAdoのボーカルのすごさが際立っているのだ。数多のボーカリストが歌い継いできたこの曲は、主に「おばけになり切る」パターンと「おばけの世界を表現する」パターンの歌唱に大別できるが、Adoは1フレーズごと、なんなら1音ごとにそれを使い分けながらどちらもやっている。ひゅうどろどろと言わんばかりの脱力した歌い出しから、滑稽なセリフ回し、うらめしや的な深い発声に面目躍如のがなり、そして絶叫! 羽生まゐごならではの三味線サウンドに百鬼夜行さながらの奥行き感のあるミックス含め、恐怖の先にある美しさまで感じる1曲。(畑雄介)(『ROCKIN'ON JAPAN』2025年7月号より)
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