バンドを長く続けてきて、新たなチャレンジへの意欲を見せるバンドってなかなか少ないと思う。
でも、クリープハイプは自分たちを変えようとしていますよね。そこにびっくりします(n-buna)
今年リリースされたクリープハイプのトリビュートアルバム『もしも生まれ変わったならそっとこんな声になって』において、素晴らしく鮮やかな“憂、燦々”のカバーを披露したヨルシカ。そんなヨルシカのコンポーザーであるn-bunaは、“キケンナアソビ”のリミックスを手掛けたり、クリープハイプのメジャーデビュー10周年記念にリリースされた“ex ダーリン”のバンドバージョンにおいてリアレンジを手掛けたりと、近年のクリープハイプ作品における重要なコラボレーターのひとりだ。今回はそんなn-bunaと尾崎世界観の対談が実現。クリティカルなクリープハイプ論とヨルシカ論が交わされる、超濃密な対談となった。ヨルシカは作っているものが変わらない。そこは本当に羨ましい部分で。
自分の場合は、「またこれか」と「変わっちゃった」というふたつの意見の間で迷うことが、長く続けることだと思ってきたから(尾崎)
尾崎もn-bunaも「文学的」といった表現で紹介されることの多い音楽家だが、実際は、その表現が自身の肉体と深く結びつく尾崎と、既存の文学作品を直接的に引用したりモチーフにしたりしながら作品を構築するn-bunaの創作へのアプローチはまったく違う。この対談中も、自ら「ぐちゃぐちゃしている」と言いながら「答え」よりも「問い」を放つように言葉を語る尾崎と、明解に自らの理論を言葉にするn-bunaの語り口はかなり違うもので、だからこそお互いがリスペクトし合っていることが感じられた。その違いのうえであえて両者の通ずる部分を挙げるとするなら、それは「音楽を作る痛み」まで音楽にしてしまうような、そんな身を切るような創作への切実さにあるのではないかと思う。
司会として現場にいた筆者がほとんど口を挟む余地もないほど盛り上がったふたりの対話、たっぷり楽しんでほしい。
インタビュー=天野史彬 撮影=笠井爾示(KATT)[尾崎]
(『ROCKIN'ON JAPAN』2025年1月号より抜粋)
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