パルプの奇跡としか言いようがない来日公演が叶ったこの2025年は、やはりミラクルな年であるようだ。何故ならついにパルプのニューアルバムがリリースされるのだから! 『ウィ・ラヴ・ライフ』から実に24年ぶりとなる新作は、その名も『モア』。rockin'on sonicでの感動的なステージを多くの人が目撃し、「もっと(more)パルプを!」という機運が日本でも最高潮に達した年に、相応しいタイトルだと言えるんじゃないだろうか。
ライブだけに終わった第一次再結成とは対照的に、2023年の第二次再結成がよりクリエイティブなものであることは、ツアーで次々に披露された新曲や、ラフ・トレードとの新規契約にも明らかだった。『モア』のレコーディングはツアーと並行して行われたようだが、楽曲の書かれた時期はバラバラで、例えば“ザ・ヒム・オブ・ザ・ノース”のように、過去にジャーヴィスがソロで書いた曲も収録されている。そうした背景もあって、本作は懐かしいパルプと新しいパルプが混在した一作になったと感じる。既に新アンセム化した“スパイク・アイランド”や、“アンダーウェア”を彷彿させる泣きメロに悶える“バックグラウンド・ノイズ”、ジャーヴィスが裏声で《L! O! V! E!》と叫ぶ“ゴット・トゥ・ハヴ・ラヴ”など、これぞパルプ!な曲群の一方で、今の彼ららしいマチュアなストリングス使いや、ラウンジーなサウンドスケープ、内宇宙の深部にダイブするような歌声といった要素は、どこかアークティック・モンキーズの『ザ・カー』を彷彿させる新機軸だ(本作もプロデューサーがジェームス・フォードだと聞いて納得)。
現時点で歌詞は届いていないので詳しいテーマは不明だが、プレスリリースによると「生きる」こと、「人生」そのものと向き合った作品であるという。4年前の本誌インタビューで「曲を書くというのが、僕にとっての世界の意味を理解する方法、あるいは自分の人生の意味なんだとやっと気づいた」とジャーヴィスが言っていたのを思い出す。まさに『モア』は、その気づき無くしては生まれなかったアルバムなのだろう。そのあたりも次号、インタビューで迫ります! (粉川しの)
パルプの記事は、現在発売中の『ロッキング・オン』6月号に掲載中です。ご購入はお近くの書店または以下のリンク先より。
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