コンセプトが「1990年代」ということで、まさに彼らが青春を過ごした当時に鳴っていた音楽たちのエッセンスが今作にはたくさん散りばめられている。しかし、近年のMUCCの特徴として、ただ懐かしいというだけでなく、2025年の音像を懐かしさの中に取り入れて、繊細に昇華されていることが聴いていてわかる。
たとえば、リード曲“Daydream Believer”なら、キラキラとしたギターやシンセサイザーの鳴り、ボーカルのメロディラインなど、一聴する限りはまさに90年代や00年代を思い出す懐かしさがある。ただ、疾走感、展開の広がり、リズム隊による音圧など、本筋を固めるための周りの構造(音)が当時とは違った、2025年のMUCCの表現だと私は思っている。
逹瑯はインタビューの中で「リーダー(ミヤ・G)から(コンセプトの)話が出たんですけど、今は世の中的にも90年代〜00年代の音楽が流行っているじゃないですか。僕らはそこをリアルに思春期で過ごした世代だからこそ、『こういうのもあったじゃん』とか『こういうのもやりたいじゃん』みたいなインスピレーションがどんどん出てくるんです。それがクリエイティブに反映されていった結果だと思いますね」と話していた。このクリエイティブな衝動が形になった作品、それが『1997』であり、その初期衝動のような思いが結成年というタイトルになったのではないだろうか。
リバイバルという言葉を最近はよく耳にするけれど、90年代〜00年代を体感し、生きてきたMUCCだからこそ、今作に収録された全16曲には、聴けば聴くほどに深みを感じることができる。そんな『1997』について逹瑯がたっぷりと語ってくれている『ROCKIN'ON JAPAN』6月号のインタビュー全編をお見逃しなく!(岩田知大)
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