スレイヤー、メガデスら一挙集結! LOUD PARK 15、第10回の模様を徹底レポート<前編>

スレイヤー、メガデスら一挙集結! LOUD PARK 15、第10回の模様を徹底レポート<前編>

日本史上最大のメタル・フェスとして2006年に初開催され、今年で10回目を迎えたLOUD PARK 15。

RO69では、スレイヤーとメガデスをヘッドライナーに据え、10月10日(土)・11日(日)の2日間に亙ってさいたまスーパーアリーナで開催された同フェス2日間のオリジナル・レポート記事を前後編でお届けします。

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【LOUD PARK 15 @ さいたまスーパーアリーナ<前編>】

記念すべき第10回目を迎えたヘヴィメタルの祭典ラウドパーク、今年は、さいたまスーパーアリーナでは初の2日間3ステージの構成となり、アニバーサリーに相応しい充実のラインナップが顔を揃えて開催された。

1日目でまず個人的に注目したアクトは、これが初来日となるフランスの俊英ゴジラ。タイトルをフランソワ・トリュフォーの映画『野生の少年』からとっていることでも一筋縄でいかない感じの最新アルバム『ランファン・ソヴァージュ』(2012)は、ピッチフォークやガーディアンなどの非メタル系も含めた海外メディアでも高く評価された。その演奏は予想以上にタイトで、重厚かつ複雑な楽曲をレコード以上にダイナミックに、そしてどこかエレガントに再現していて素晴らしい。バンド名がバンド名だけに、これを機に日本でもいっそう人気を高めていくことは間違いないだろう。

続いて隣のアルティメット・ステージは、何故こんな早い時間にやるのか理解できないくらい豪華メンツが参加したオールスター・プロジェクトのメタル・アリージェンス。この日のメンバーはメガデスのデイヴ・エレフソン、スレイヤーのゲイリー・ホルト、アンスラックスのチャーリー・ベナンテ、テスタメントのアレックス・スコルニック、デス・エンジェルのマーク・オセグエダを中心に、ゲストもバンバン呼び込みながら、アイアン・メイデンの“ラスチャイルド”や“誇り高き戦い”、ブラック・サバスの“ヘヴン・アンド・ヘル”などメタルの名曲カバーを連発。ラストはメタリカの“シーク・アンド・デストロイ”をブッ放して、いきなりの大団円ムードに面食らうほど。クロージング・アクトとして打ち上げ大会を担ってもらってもいいのではないかと思った。

次にビッグ・ロック・ステージに登場したオール・ザット・リメインズは、東日本大震災の当日に都内でライヴを敢行したことでも知られるスプリングフィールド出身のバンド。マサチューセッツ界隈には、コンヴァージやキルスウィッチ・エンゲイジなどユニークなメタル・バンドが大勢いるが、このバンドもかなりの個性派だ。シンガーのフィリップ・ラボンテは、いつものように緑のTシャツに短パン、キャップというカジュアルな服装だが、グロールやスクリームを自在に操る見事な歌いっぷり。トラディショナル・グリップでスティックを持ってパワフルに叩きまくるドラマーのジェイソン・コスタや、ミスフィッツのTシャツを着た新ベーシストなどが鳴らすサウンドは、自分には妙にしっくりくるところがあって、この日も思いっきり堪能できた。

「パンク・アズ・ファック」と書かれたTシャツや、ハンチングをひっかけた風体にも表れているように、メタルというよりもワイルドなハード・ロックを聴かせるスウェーデンのバックヤード・ベイビーズは、2009年の活動停止から復活を果たしての来日。ラウドパークではこの手のバンドが中盤を務めることも多いが、特にアウェイ感はなく、どのアクトもアリーナ前方エリアは大勢の人が詰めかけ一様に盛り上がりを見せる。演奏終了後にシド・ヴィシャスの“マイ・ウェイ”が流れたのは、おそらくバンド自身の選曲ではなさそうだが、とにかくこの時、長い間メタルとパンクの間にイメージしていた溝がゆったりとしたグラデーションになったような感覚を覚えた。

ここで、初期スラッシュ・メタル・シーンを切り開いたベイエリア・クランチの重鎮テスタメントが早くも登場。この後のアンスラックスもそうだが、大御所と呼ばれる存在が中盤から登場してしまうのも、今年のラインナップの厚みを実証している。ヴォーカル/リフ/ドラミングなど、どのスタイルもフォロワーに継承され続けている「これぞスラッシュ」というサウンドは、オリジンならではの迫力を持ち、同時に単なる古典には収まらないエネルギーが溢ちていた。それを大きなオバサンみたいな風情のチャック・ビリーが、フレディ・マーキュリーのように短い持ち手のついたマイクで延々とエアギターしながらニコニコと先導していく光景は、また不思議な安心感を与えてくれる。

お次は、いよいよ「スラッシュ四天王」の一角を担うアンスラックス。この段階でアリーナは後方のフロアまで埋まっており、ステージ前方あたりだけではなくスタジアム全体が盛り上がっている。オーディエンスの熱に応えるかのように、バンドも“マッドハウス”、“アンチソーシャル”、“インディアンズ”といった代表曲を連射につぐ連射。正直に言うとジョン・ブッシュが歌っていた時代にも好きな作品が多い人間としては、そこから1曲もないのが少しだけ寂しかったりもするのだが、大好きな“ガット・ザ・タイム”も聴けたし、現時点での最新アルバム『ワーシップ・ミュージック』(2011)の曲も良かったので不満はない。そしてチャーリー・ベナンテは本当に良いドラマーだなと、今更のように実感し直した。

フィンランド出身のチルドレン・オブ・ボドムは、ヴォーカル/ギターのアレキシ・ライホが漂わせるクールネスと対照的な、キーボードのヤンネ・ウィルマンのかわいらしい佇まいに、いつもほのぼのしてしまう。ヤンネは「オマネキイタダキ、アリガトゴザイマス」と日本語でMCしたり、今年からツアー・ギタリストを担当しているのが自分の兄弟であることを嬉しそうに報告したり、ステージ前方に出てきてドラムスティックをまわしていたが落としてしまい「やっべ」という表情を見せたりと期待に応えつつ(?)、もちろん流麗な鍵盤プレイでも本領発揮。どっしりとしたドラムで爆走するメロディック・デス・メタルは、捻くれた感触のある音楽性のアンスラックスを観た直後だったこともあり、「まさに王道!」を突き進む印象をますます強くした。

そして、前回に引き続き2年連続の出演となるアーチ・エネミー。稀代の女性メタル・シンガーだったアンジェラ・ゴソウの後を継いだアリッサ・ホワイト・グラズの日本でのお披露目公演となった昨年のステージでは、堂々たるステージングにいきなり魅了させられてしまったが、あれから1年、すでに彼女は完璧に女王としての風格を身に纏っていた。その素晴らしさは、バンド20周年ということで設けられた、初代ヴォーカリストのヨハン・リーヴァと、アルマゲドンとして翌日に出演した元メンバーのクリストファー・アモットが客演するというスペシャル・コーナーの最中も、つい「アリッサをもっと見たいのにな……」とか思ってしまったほど。去年アーチ・エネミー(およびアマランスとバトル・ビースト)を観て以来、「メタルは女性進出によって、さらに発展する大きな可能性を持っている」と強く実感するようになった自分にとって、彼女はまさにヘヴィメタルの希望の象徴だ。

初日のトリを飾ったスレイヤーは、一昨年にギタリストのジェフ・ハンネマンが亡くなってからの初めてのアルバム『リペントレス』を完成させての来日。ジェフの代わりを務めるゲイリー・ホルト、デイヴ・ロンバードの穴を埋めるポール・ボスタフとともに、ケリー・キングとトム・アラヤはいつも通りの帝王っぷりを見せつけた。もはやスラッシュ・メタル・バンドは山ほどいて、その発展系も数多あるが、スレイヤーほど純粋にスラッシュを極め切ったバンドは他にいないだろう。彼らの到達したレベルから鳴らされるその巨大な音像は、なんというか次元をひとつ越えてエクスペリメンタル・ミュージックのようにさえ感じられる。ラストに演奏されたマスターピース“エンジェル・オブ・デス”は、作者であるハンネマンへの敬意を表して、後方に「ハンネマン/スティル・レイニング」と記されたバックドロップが掲げられたが、それは生前のジェフが自らのギターにあしらっていたハイネケン・ビールの商品ラベルを模したものになっていた。(鈴木喜之)

<後編に続く>
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