7年ぶりの新生

トータス『ザ・カタストロフィスト』
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ALBUM
トータス ザ・カタストロフィスト
メンバーの顔を切り貼りしたコンポジット写真のジャケの不気味さにまず驚く/退くが、これは──トータスらしいユーモアも多分に含まれている──本作の本質をよく捉えていると思う。作品の起点になったのは、2010年にシカゴ市に依頼され制作した一連の組曲群だったという。同プロジェクトのコンセプトは、シカゴの誇るジャズと即興音楽の歴史/遺産を踏まえるというもの。その広範なテンプレートと柔軟性は、「トータス」のバナーを超えてメンバー各人の興味や実験性をトラックごとに反映させるコラージュ型の作風に繫がっている。全体にエレクトロニック色が濃いとはいえ、ロックおよびフォークのヴォーカル曲(!)も含まれており、ミニマル前衛、ジャズ&ソウル、ワールド・ミュージック等々、多彩な要素が絡み合い互いを浸食していく。そもそもジャンル分けの通用しないバンドではあるが、本作の闊達な折衷欲はリフレッシングとしか言いようがない。逆に言えば端正さを好む古株のトータス・ファンは懐疑心を抱く作品かもしれないが、音源デビューから20年余りの今もなお、スリリングな音の冒険を続ける意志は尊重したい。(坂本麻里子)
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