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悲恋の歌である。初の日本武道館公演の直前に配信リリースされたのが、歌詞の世界観がどこかかつての“絵空”を思わせる、報われないまま記憶に焼きついてしまった恋心を歌うこの“フリージア”だったことは、マルシィの、その一見繊細そうな佇まいの奥にある「俺は俺である」ということへの覚悟を感じさせる。様々な角度から、人の愛と情を描いてきた。愛とは何か、恋とは何か、その先にある未来とはどんなものか、考え、想像し続けた。表情や仕草の奥に隠された人の心の動きを見つめ続けた。そんなこの数年間の活動の上にあるからこそ、“フリージア”は美しく輝いている。ひとつの場所で立ち止まり、《君》を追想し続けた主人公が、曲の中で最後に辿り着く場所が愛おしい。運命も、想像し得る未来すらも手放した時に胸に宿る悲しみは、不思議と吹き抜ける春風のような清々しさを持っている。ラストのストリングスは、そんな透明な悲しみを抱いてなお今この瞬間を生き抜くあなたを包み込む風のように響く。(天野史彬)
(『ROCKIN'ON JAPAN』2025年6月号より)
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