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“走れSAKAMOTO”に続くデジタルシングルで、ブルージーにスライドするギタープレイと、スクラッチング入りの鋭角なブレイクビーツが織り成す1曲。別れたばかりのあの娘に対する思いを妄想で塗りたくることにより、どうにか自尊心を保っている、そんな哀しい時間がありありと浮かび上がってくるようだ。酩酊感を自覚しながらもどこか客観的で醒めている、そんなVaundyらしいマインドが曲調とシンクロしながら突き進み、《神がかった静寂が/わたしの幸せをつくってんです。/膨れ上がった悪党が/わたくしの心を守っていて》という、中原中也を彷彿とさせるような詩情へと到達するさまがすごい。一時の悲しみにもアルコールにも酔うことができない、そんな危うい思考の暴走がひたすらクレッシェンドしてゆく。玄妙なコード進行や鋭いビートを、まるで塩味や苦味のように張り巡らせ、その向こう側にほのかな甘味を見つけてゆくような人生観。それがVaundyのテーマソングと化したかのようである。(小池宏和)(『ROCKIN'ON JAPAN』2025年6月号より)
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