リュックと添い寝ごはんのニューアルバムのタイトルが『Terminal』だと知ったとき、なんてぴったりなんだろうと思った。電車やバスは僕らの日常のすぐ側にありながら、時に目の前の現実から遠く離れた場所へと誘ってくれるものである。日々のハローグッバイを彩りながら、あたたかいサウンドで僕らの心を夢の世界に連れていくリュクソの音楽にぴったりな言葉だ。人それぞれいろんな列車に乗って、いろんな景色を見るだろうけど、僕らが故郷の街であり続けたい
しかし、今作『Terminal』で彼らが連れていくのは夢の世界だけではない。リュクソの「ゆるふわ」(ぬん曰く)なイメージを鮮やかに裏切るかのように、“天国街道”では中華風の爆裂ポップサウンドに乗せて《日々は地獄だらけ》と軽快に毒づき、ゲームのサントラのような“Pop Quest”では《バグまみれダンジョン》での眠れない夜の葛藤を吐露する。高校生だった彼らも今や22歳、大学4年生になって(ぬんはひとつ先輩だけど)、感情のパレットはどんどん多彩になった。人生の岐路に立ち、バンドにかける想いはどんどん強くなった。アルバムは終点に近づくにつれ、いつも通りのあたたかいメッセージを届けるようになるけれど、ダークな想いを越えて届けられる《暗い日々が続くなら君の帰りを待つよ》(“long good-bye”)という言葉は、これまでにない説得力を持つ。酸いも甘いも噛み分けた先で、あなたの「ただいま」を待つリュクソの、少し頼もしくなった背中がこのインタビューから見えるはずだ。
インタビュー=畑雄介 撮影=増田彩来
(『ROCKIN'ON JAPAN』2024年5月号より抜粋)
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