【全文掲載】NYエレクトロシーンの超新星、フロスト・チルドレンにインタビュー! 米津玄師をはじめ世界のメジャーシーンから熱視線を浴びるそのクリエーションと、次なる野望に迫る――

【全文掲載】NYエレクトロシーンの超新星、フロスト・チルドレンにインタビュー! 米津玄師をはじめ世界のメジャーシーンから熱視線を浴びるそのクリエーションと、次なる野望に迫る――

3月10日に初来日公演を予定しているフロスト・チルドレン。アメリカのセント・ルイス出身で現在はニューヨークを拠点とする、きょうだいのポップデュオだ。ハイパーポップの潮流の中から現れ、DIYな活動スタイルで支持を高めていった二人は、いまや世界各地のフェスに呼ばれる存在となった。最新アルバム『Sister』のダンサブルなサウンド、直感を信じ切る制作姿勢、そして日本のカルチャーへの強い共鳴。変化を恐れず、何度でも自分たちを再構築していくフロスト・チルドレンの現在地を、エンジェルとルルにじっくり語ってもらった。

(インタビュアー:つやちゃん rockin'on 26年3月号掲載) 


●二人はどんな環境で育ち、最初に音楽に惹かれたのはいつでしたか?

エンジェル「最初に音楽をやりたいと思ったきっかけは、映画『スコット・ピルグリム VS. 邪悪な元カレ軍団』を観たことから。そこからバンドやったら楽しそうと思ってさ」

ルル「最初はそれぞれ自分たちの友達と別でバンドをやってて。それが高校ぐらいになって自分一人で音楽を作るのにハマって、PCと音楽が一番の親友みたいになってね。そこからSoundCloudで繋がったオンライン上の友達と遊びでレーベルみたいなものを作って、自分のビートをアップするようになったんだよね」

エンジェル「でも育った環境はまたそれとは違ってて、両親ともAC/DCとかイーグルスとか70年代のロックバンドが好きで。だから、子どもの頃はたぶんそっち系中心に聴いてたはず。自分で最初にハマった音楽で言えばブラック・アイド・ピーズとかだったんじゃないかな。それが最初に訪れた転機かも」

ルル「なんか全部ごちゃ混ぜみたいな。自分はいわゆるアメリカのショッピングモールでかかってそうなエモから最初は入っていった感じで」

●ハイパーポップの文脈で注目を集め、バンドサウンドも取り入れた後に、最新作ではEDM風へと音楽性がどんどん変化してきています。ジャンルを横断する中で、これは自分たちの核だと感じる要素は?

ルル「自分たちのやってる音楽とか友達のバンドとかもそうだけど、パンデミックの時期に一気に台頭したハイパーポップのシーンの中から出てきたことになってて。とにかくクレイジーな音楽をやってやれ!的なノリというか、今振り返ってみると、ある種のコミュニティ的な空間として機能してたように感じてる。ただ、今ではそれぞれがそこから独立してアーティストとして個別の道を歩んでるよね。あのシーンを踏み台にして、自分たちだけの世界を開拓しにいってるような。今、まさにそういう状態にあると思う」

エンジェル「本当にそう。遊び心とか新しい音への好奇心は相変わらず持ち続けてるし、それと同時にただクレイジーであるだけじゃなくて、ソングライティングであるとかポップであるとか一本芯の通った表現を目指してる。ハイパーポップの世界って正直ちょっと窮屈だったというか、最初から世界が限定されていたように感じてて。それってたぶん自分たちだけじゃなくて、あの周辺の若いアーティストはみんな感じてたことですぐにそこから抜ける方向で動いていったような」

ルル「そもそもSpotifyが捻り出したジャンルだから。それが明らかになってからは、みんなさっさと逃げるようになった(笑)」

エンジェル「ただ、最新のアルバム『Sister』ってわりと初期の作品に近い音になってるし、いわゆるハイパーポップとEDMはすごく近しいから、参照元は近いのかもね」

●フロスト・チルドレンを聴いていると、完成度や正しさといった印象よりも先に、「楽しい!」「変だ!」と感じることが多いのですが——

二人「ホントそう!」

●お二人のそういったセンスは、どうやって培われたのでしょう?

ルル「正直、自分でもどこから来るのかわかってない。でも、そこが未知で逆に面白いんだと思う。人間にとって普遍的な、自分よりも大きな存在みたいなものが自分たちを通して何かを伝えようとしているような……その高次元の存在がこの音楽は世に送り出されるべきだって意思の下に動いてて、たまたま自分たちがそれを形にする媒体として利用されてるだけみたいな感覚というか」

エンジェル「自分の直感を100%信じ切ったゆえの音だと思う。ルールがまったくないのとは違う、あくまでも自分なりのルールを持ってそこに忠実にやっている感じ。それを持ってることがアーティストとして大事だよね。外に答えを探すんじゃなくて、自分の内側から湧き出る感覚から培われてきたもの」

●あなたたちの表現にとっては、ビジュアルも重要な要素ですよね。

ルル「すごく大事。聴く人をトランス状態に導くような、現実逃避できる空間を作り出そうとしてる」

エンジェル「あー、本当にそう」

ルル「二人とも高校生のときにラルフ ローレンでバイトしてたこともあって、ファッションやビジュアルを通して自分たちを表現することを昔からやってるので。あの大学生っぽい、プレッピーなファッションがなんかしっくりくるというか、それを自分たちの表現にも応用してる」

●フロスト・チルドレンに限らず、以前は表現の場としてインターネットが重要だったアーティストが、ここ数年でどんどんライブをしてリアルな場に出てきている印象です。

エンジェル「2000年代の人たちみたいな感覚でネットと接するのが理想だなって。ネットを通じて自分と同じ気持ちを共有できる仲間と出会ってっていう、その延長線上としてスタジアムみたいな大会場にみんなで集まって同じ気持ちを共有するのがあると思ってて。それは完全にリアルなコミュニケーションが主体だし、そこに重きを置いてる」

ルル「インターネットに関しては、たぶんビジュアル面からのインスピレーションのほうが大きい。でも最近ではSNSと距離を置こうとしてて、一回15分って決めて自動的に閉じる設定にしてる。自分の精神衛生が確実に向上したよ。エンジェルが隣でビートなり作ってる横で休憩したくなったとき、以前だったら画面をひたすらスワイプしたのが今は雑誌を眺めてたりするんだよね。そもそもそのスマホからの情報って必要だったのかな?っていう」

●近況を客観的に見れば、フロスト・チルドレンはDIY出身だけど、もうスター側にいるとも言えます。今ポップな存在になることを引き受けようというフェーズに置かれていると思いますが、いかがでしょう?

エンジェル「本当にそれは自分たちでもしょっちゅう話し合ってるところで。ポップアーティストとしてメインストリームに活躍の場を広げながらも、ファンの中ではいまだにニッチで特別な存在として愛され続けるのが理想ではあるけど。ただ、今の時代はポップアーティストであることのほうがむしろパンクな気がして。80年代や90年代みたいにノスタルジーからパンク的スタイルをいつまでも引っ張り続けるよりも、そういうこだわりをいったん手放して、全世界に向けて発信する覚悟で音楽を作り続けることのほうがよっぽどパンクだと思う。それもあってDIYでい続けるのが難しくなってるのもあるよ。ファンにいつまでもDIY的なキャラとしてリスペクトされ続けたいがために、そこで自分たちの音楽やアートが世界中に広まる可能性の幅を自分たちから狭めるってどう考えてもおかしいし。自分たちはフロスト・チルドレンというものを何度でも再構築し続けるつもり」

●日本の音楽やカルチャーには、どんなイメージを持っていますか?

エンジェル「もはや洗脳されてるレベル。中田ヤスタカとかPerfumeとかCAPSULEのサウンドが大好きで」

ルル「ビジュアルではX JAPANやMALICE MIZERあたりの日本のビジュアル系が好き。あの辺の自分至上主義感って誰にも再現できない」

エンジェル「そう、あの突き抜けた感じ! それって自分たちの音楽にもすごく通じてると思う。青葉市子みたいに美しくて繊細な表現をしてるアーティストがいる一方で、反対側には『Dance Dance Revolution』みたいなゲームミュージックがあって、両方ともものすごくインスピレーションを受けてる。それに日本のアニメも好き。米津玄師の『チェンソーマン』のテーマ曲”KICK BACK”もリミックスしたし、『NANA』 とかファッション系のアニメも好き。ほんと挙げていったらキリがない」

ルル「西洋と日本のカルチャーでお互いに影響し合ってるところがすごく美しい。ちょうど今はアメリカ側が日本から影響を受けてる時期にあるけど、その前を遡ると 80年代のアメリカのグラムロックから日本のビジュアル系や独自のファッションカルチャーが生まれて、それがまた逆輸入されてアメリカのカルチャーに影響を与えてるっていうキャッチボールが昔からずっと続いてる」

エンジェル「日本のロックンロールおよびアメリカーナの解釈が自分たちアメリカ人の目にはすごく新鮮に映って面白いんだよね。そうやってお互いのカルチャーが混ざり合ってく感じが最高だよ」



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