2003年に大阪で結成されたメロディック・ハードコアの雄、waterweed。COMEBACK KIDやSHAI HULUDといった来日バンドのサポートを担う一方で、幾度ものメンバーチェンジを乗り越えてきた歴史を持つ。特に、ここ数年はバンドにとって大きな転機となった。2015年にギタリストが脱退し、やむを得ず3ピースで活動を続けながら、EP『Landscapes』、アルバム『Brightest』をリリース。そこから海外における評価が高まり、アジアツアー、ヨーロッパツアーを重ね、国内でも逆輸入的に盛り上がりを見せることとなったのだ。
今年1月にはShotaro Ono(G・Cho)が加入し、再び4人編成に。そして4月にリリースされたアルバム『Diffuse』からは、そんな今の彼らの充実ぶりを窺うことができる。実はグローバルなハードコアの特性と、彼らだけのしなやかな感性が合わさり、より多くの人にその魅力を伝える可能性を秘めた一枚になっているのだ。明快な歌詞と幅広い曲調は、きっとあなたの固定概念を崩すだろう。バンドを代表してメンバー3人に集まってもらい、話を聞いた。
インタビュー=高橋美穂
3人の期間はレコーディングもライブもしんどくて、自分たちの求めているものができなくて、だから余計に今がめちゃめちゃいいです。精神的にも強くなりました(Ohga)
――今回のアルバムは『Diffuse』=拡散するという意味のタイトルじゃないですか。そんなタイミングで取材できることを嬉しく思うんですが、このタイトルを付けた意図を教えていただけますか?
Tomohiro Ohga(B・Vo) 今までも拡散するつもりではいたんですけど(笑)、タイトルを考えている時に、自分の中でいろんな案が出て、どれがいいかな?っていうこともメンバーと共有していて。でも、なかなかしっくりこないっていうことで、全然関係ない人に相談したら、ポンってこの単語を出されて、めちゃめちゃしっくりきて、付けました。
――メンバー以外の方からのアイディアだったんですね! 確かに『Brightest』からは、バンドにとって「拡散」の時期でした。ただ、『Brightest』は、キャリア初の3ピースとしてリリースされたじゃないですか。逆境とも思える状況を乗り越えて、こうした流れをつかんだことも素晴らしいですよね。
Ohga めちゃめちゃ逆境でしたよ。突然前のギターがいなくなったんで。まずは決まっているライブを3人でどうやるかっていうところで、ひたすら練習してアレンジして。そのすぐ後に『Landscapes』をリリースすることが決まっていたので、3人でやるのか、サポート入れるのか、いったん止めるのか、いろいろメンバーで話していて……個人的にはこれを越えたらタフになれるかなって思ってたし、止めたくなかったので、これはこれで面白そうだなって、無理矢理3人でやっていきましたね。3人の期間はレコーディングもライブもしんどくて、自分たちの求めているものができなくて、だから余計に今がめちゃめちゃいいです。精神的にも強くなりました。
――なるほど。歴史を振り返ると、その時期以外も、メンバーチェンジや休止など、いろいろな試練を乗り越えてきたバンドじゃないですか。周りのバンドが解散や休止をする様子も見てきたと思うんです。そんな中で、waterweedを支えてきた信念、続けてきた理由ってどんなものなんでしょうか。
Ohga 最初からやっているのは僕だけで、いっぱいメンバー……サッカーチーム作れるくらい抜けたんですけど。この(Shigeo)Matsubara(Dr)と、今日来ていない(Hiroshi)Sakamoto(G・Cho)は2009年から一緒にやっていて。こいつ(Ono)は今年入ったんですけど、ずっと前から知っていますし。以前は考え方もやりたいことも全然違って、メンバーが抜けることもたいしたことじゃなかったんです。一回活動が止まった時があったんですけど、その時は意地しかなくって。僕一人になって、ここで辞めるのはカッコ悪いから、とにかくこのバンドを続けることだけを考えて。今は、そういう意地はないんですけど。楽しいからやってるだけで(笑)、生きがいみたいなものです。バンドを長く、みんながいい状況で続けていくのが一番大事っていうか。そんな無理してやることでもないし。そのために頑張らなあかんところは頑張るし、楽しむところは楽しむし、でも、自分たちが一番カッコいいっていう気持ちはもちろんあってっていう。どうですか?
Matsubara 大丈夫でしょう(笑)!
――OK出ました(笑)。Matsubaraさんは、今バンドを楽しめている感覚はありますか?
Matsubara そうですね。楽しいのが一番で。あとは、周りの人……協力してくれる人たちともいい関係になれるように。僕らが頑張れば状況も変わると思うし、仲のいい外国のバンドも呼べると思うし、そういうものも目的になってきました。今回ヨーロッパとか行ったので、もっと周りに返せるようになりたい気持ちもありますね。
waterweedみたいにいっぱいツアーをまわる生活に昔から憧れていて、人生の中でやってみたいという気持ちがあった(Ono)
――素晴らしいですね。では、やっとOnoさんの登場です(笑)。今年、加入した経緯を教えていただけますか?
Ohga まず3人になったタイミングで、誰か入れたいとは思ったんです。ただ、新しく若いギターを入れるのも違うなと思って……昔からShotaroは知っていたんで、バンドにいたらいいのになっていう話はしていて。その時Shotaroは東京にいて別のバンドもしていたから、現実的な話ではなかったんですけど。そこから3人で2年間頑張って、これからもやっていくだろうと思っていたんですけど、(Onoが)まず仕事で大阪に来たんですね。そこでうちのスタジオにしょっちゅう遊びに来るようになって、気が付いたらギターも持っていたっていう(笑)。ただ、Shotaroはちゃんとした仕事をしていたので、俺たちは海外に2週間行くようなバンドだから、今の仕事だとできないよって言ったら(仕事を)辞めてきちゃったんで、じゃあ、やりますか?っていう流れです。
Ono もともと好きなバンドだったんで。個人的には、waterweedみたいにいっぱいツアーをまわる生活に昔から憧れていて、人生の中でやってみたいという気持ちがあって、入らせていただきました。
――waterweedのどういうところが好きだったんでしょうか。
Ono 本人たちを目の前にして言うのも恥ずかしい(笑)。そもそも、初期からのメンバーはOhgaさんしかいませんけど、僕は初期の音源、もっと言うとデモ音源から好きで。Ohgaさんとひとつしか年齢は変わらないんですけど、すごい人って思っているから、今でも「Ohgaさん」なんです。昔から不器用で泥臭くて、でもまっすぐで。ライブもそうですし。男から見ててカッコいいんですよね。他の二人も……waterweedは、みんな真面目なんですよ。だから、機材車でも真面目な話をするのかな?って思っていたら、全然そんなことなくて。Matsubaraくんはすぐにラーメン屋の情報を調べ出して、そこに向かっているのに、途中で「ここのほうがいいかも!」って他のラーメン屋を見つけたり(笑)。なのでストイックすぎることなく、かわいらしいって言ったら変ですけど(笑)。
Ohga 曲作りと練習とライブに関しては真面目にやっていて、それ以外は、ね、みんな仲良くやれたらいいなって(笑)。
――だからこそ楽しくやれているわけですもんね。いよいよ新作『Diffuse』の話を伺いたいんですが、曲作りは3人の時からはじめていたんですか?
Ohga 3人の時からちょっとずつはじめてはいたんです。ヨーロッパから帰ってきてから。でも、そのタイミングでこの人(Ono)が入るか入らないかみたいな感じになったので、ツインギターになるし、一旦バラして一から作ろうかと。で、そっから3ヶ月くらいで作っていった感じですね。
――曲作りの方法そのものも変化したということですか?
Ohga でも、もともとは4人編成だったので。3人になってシンプルにしたり音を変えたりしていたんですけど、そこに(Onoが)入ってきたので、わりとすんなり、これこれっていう感じで。
――今作のテーマとか方針って、事前にありましたか?
Matsubara 1曲目から2曲目の流れとか、細かいところにはなりますけど、そういうのはありました。
Ohga 僕が曲を作るんですけど、ざっくりドラムやギターも作るんですね。それをいい環境で録ってみんなに聴いてもらって、その時に顔色を窺いながら、これはいけるっぽいな? これはダメっぽいな? みたいに感じて。じゃあ、この曲を作りましょうってなると、(Matsubaraが)「1曲目どないすんの?」「リードトラックはどれなんですか?」みたいに言ってきて(笑)。アルバムのバランスを考えてくれるっていう。
Matsubara (笑)。ドラムなので、速いビートの曲ばかり続くと、ここらでちょっと落とした曲がいるんじゃないですかOhgaはん?みたいな感じでは言いますね。あと、今回の1曲目、2曲目は、ライブの最初に使える感じで入れたかったっていう。
Ohga 僕ら、音源の曲順はライブも想定しているので。ライブのセットリストを組む感じです。