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ドラマ『バニラな毎日』の劇中歌“片想い”と主題歌“涙の正体”が収録されたシングルだが、1曲目に“片想い”、2曲目に“涙の正体”という曲順が、本作の作品性を高めている。静かな独白のようなバラード“片想い”から、ライブでのシンガロングも目に浮かぶ、強いメッセージ性を持つ“涙の正体”へ。初めから熱狂やダイナミズムを叩きつけるわけではなく、じんわりと、バンドと聴き手が心を開示した先に広がる景色として、ひとつのカタルシスが生み出される。結論だけでなく、道筋や過程にも美学や品性が見出されている。歌い出しが見事だ。《どこか遠くで 打ち上がる 花火の音/どうしようもないのに 焦ってしまった》――世界の片隅に佇む主人公の、孤独と焦燥を切り取る写実的な描写で幕を開ける“片想い”は、曲が進むにつれ、片隅だと思っていた「今この場所」こそが、実は世界の中心であることを伝える。一度だけ現れる《僕たち》という主語が、この音楽に託された切実な理想と共鳴、そして過去と未来を物語る。(天野史彬)
(『ROCKIN'ON JAPAN』2025年5月号より)
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