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このところの平手友梨奈は楽曲をリリースするたび、面白いように違った表情を見せる。それは彼女の「演じる」というスキルが音楽表現にも最大限に活かされている証左でもある。前作“ALL I WANT”の世界観もそうだが、そこで表現されるものは単純にシンガーと呼ぶのは憚られるほどにシアトリカルで、それが彼女の歌唱表現の強みであることを強く印象づけた。そして今回の新曲“イニミニマイニモ”で聴かせる平手の歌唱はこれまでにないほど奔放である。その歌声は楽曲が描くダークなヒロイン像を鮮やかに表現していく。それは「演じている」ものであるはずだが、平手友梨奈「その人」であるようにも感じられて、平手の蠱惑的な歌表現に引き込まれてしまう。ここに彼女の歌の魅力が宿る。中毒性の高いフューチャーハウス的なダンスサウンドにのる歌声は、現実と虚構の間から届けられるよう。彼女は今、多様な歌世界を自由に遊ぶ表現者だ。リスナーはそんな平手に惑わされながら、その歌世界に没入していくのだろう。(杉浦美恵)(『ROCKIN'ON JAPAN』2025年5月号より)
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