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彼らが脚光を浴びる契機となった“愛が一層メロウ”は確かに超強力なアンセムだが、その再現を狙いキャッチーさばかりを追求するのではなく、アルバムを通じ実にバラエティ豊かな曲調を披露している点にまず好印象。マーヴィン・ゲイのキャリア後期の傑作『Here, My Dear』(邦題『離婚伝説』)を由来とするバンド名が表す通り、ソウルを中心に60年代以降のロック~ポップス、R&Bと様々な参照元を連想させるフレーズがちりばめられており、彼らのミュージックフリークぶりが十二分に感じられる。また、曲作の面では極めて「ポップ」たらんとする意識が高く、日本における近代的な大衆性を獲得することに成功している。ただし、所謂「J-POP的」な過度にウェルメイドなアレンジとプロダクションは避けられ、ラフな質感を残した「ソウルフルなポップミュージック」として成立させているバランス感覚の良さ、センスの鋭さこそが、最重要な要素としてこのふたり組を特別な存在に引き上げているように思う。(長瀬昇)(『ROCKIN'ON JAPAN』2024年5月号より抜粋)
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