【インタビュー】神はサイコロを振らない、結成10周年&デビュー5周年! 初の武道館ワンマン直前の新曲“スケッチ”に滲む神サイの「挑戦」と「未来」のかたち

【インタビュー】神はサイコロを振らない、結成10周年&デビュー5周年! 初の武道館ワンマン直前の新曲“スケッチ”に滲む神サイの「挑戦」と「未来」のかたち - 桐木岳貢(B)桐木岳貢(B)

“火花”の歌詞を書いてる時はマジで死にかけてたんですよ。
「絶対負けんぞ!」「やったったるぞ!」っていう気持ちがそのまま歌詞に出てる

──《それでも今を生きる僕らは/この揺らぎ、歪みを信じたい》という“スケッチ”の歌詞──「揺らいでいたって、歪んでいたっていいじゃないか」と歌う人はいても、《この揺らぎ、歪みを信じたい》とまで言う人は少ないと思うんですよね。そこにこそ、ロックバンドのロックバンドたる意味があるというか。人力の、こんなにも面倒臭くて効率が悪い表現だけど、それを信じることに意義があるんじゃないか──という意志が伝わってきます。

柳田 ドラムをレコーディングするにしても、今までだったらバチバチにエディットして、クオンタイズ(音符ジャストのタイミングに揃えること)して、そこにベースを乗っけてギターを乗っけて、全部の楽器をまたエディットして、歌も全部ピッチを直して……みたいなことをしていて。そうやって完璧なものをみんなが追い求めていった結果、「かたちとしてはめっちゃきれいやけど、みんな似てんなあ」みたいなものになって。その人の元々の個性、人間らしさがあったはずなのに……って。上手いことが正解じゃないし、揺らぎ自体にグッとくる瞬間もあるんですよね。

──でも、神サイには「ロックバンドとしての肉体性」だけじゃなくて、「ハイパーで実験的な音楽を作っていくクリエイター」としての側面もあるじゃないですか。特に、昨年の“May”以降のシングル曲はどれも、1曲1曲それぞれに音楽的な冒険があるし。その、肉体性とハイパーさを両方兼ね備えた神サイの音楽を、もう1回「人間の音楽なんだ」っていうポイントを軸に再定義しようとしているのかなと思ったんですよね。特にこの“スケッチ”を聴いて。

柳田 2024年以降のリリースでいうと、確かに“スケッチ”はちょっと違う感じですよね。“May”はあったかみのある曲ですけど、シンセの音が前面に出ていたりするし。なんなら去年リリースした4曲はオングリッドの価値観の中でめちゃくちゃかっこいいものを作ろうと思っていて。“シルバーソルト”はその極致で、シンセベースとシンセありきで、むしろガチガチに構築しないとかっこよくならない曲だったりするし。


──“火花”も不思議なグルーヴを持ってる曲ですよね。

柳田 俺とガク(桐木)がファンキーなところを担っていて、亮介とよぴ(吉田)がわりとどっしりしたところにいるという二軸のグルーヴが混じり合ってるんですよね。だから演奏してても、いい意味で気持ち悪いというか、面白いんですよね。


──『ゴールデンカムイ』のタイアップ曲ということもあって、かなり闘ってる歌詞ですよね。

柳田 “火花”の歌詞を書いてる時はマジで死にかけてたんですよ。ライブハウスツアー(Live Tour 2024「近接する陽炎」)の中日で東京に2日間だけ戻ってきたんですけど、2日目が「ツタロック」だったから、1日目で“火花”を書き上げるしかなくて(笑)。「絶対負けんぞ!」「やったったるぞ!」っていう気持ちがそのまま歌詞に出てます。だから、いつ聴いても、4人でツアーをくぐり抜けてた時を思い出しますね。今の曲の書き方として、「この瞬間を全部閉じ込めたい」というスタイルがあるんですけど、それが特に色濃く出てるのが“Baby Baby”、“シルバーソルト”、“火花”、“スケッチ”かな。“May”は友達の結婚式のために書いた曲だったから、ちょっと別枠になっちゃうんですけど──いつも本当にその瞬間を切り取って歌詞を書いていて、そこにメンバーが音でそれぞれの想いを乗っけていく。だからリアルというか、人間臭いんですよね。2024年はめっちゃいい曲が作れて録れたなあって思います。温度感が全部そのまま出てるんで。あと、“スケッチ”はMVがやばいんですよ。10年を振り返る的なメンバーのオフとかレコーディング中のシーンとかを切り取ってるんですけど……涙なしには観れないですね。


黒川 ライブではしてないメンバーの表情が観れるんで、お客さんはたぶん「ガクさん、こんな表情するんだ……」って思うんじゃないかなって。

柳田 吉田くんなんか、俺の股間を鷲掴みにしてて(笑)。

吉田 いやいやいや(笑)。

柳田 ガクはちゃんとバスケットボールを取ろうとしてるんですけど、よぴはなぜか俺の股間をずっと持ってて。そのシーンがしっかり入ってるのがいいなあって。

吉田 ボール間違い?

柳田 (笑)。ガクとかよぴは、わりとクールな見え方をしてる気がするんですけど、意外とお茶目で。なんだかんだみんな、部活みたいな──大学生のまま時が止まってる、みたいなシーンがいっぱいありますね。

【インタビュー】神はサイコロを振らない、結成10周年&デビュー5周年! 初の武道館ワンマン直前の新曲“スケッチ”に滲む神サイの「挑戦」と「未来」のかたち - 黒川亮介(Dr)黒川亮介(Dr)

神サイをひと言でたとえるなら、「部活」かもと思って(笑)。
でも、将来は「株式会社神サイ」にならなきゃダメだと思ってる

──“スケッチ”を初めて聴いた時の印象はいかがでしたか?

桐木 最初にもらった歌詞には、2番の《たとえば近い未来に/音楽の姿形、全て変わり果てたとしよう》の部分がなくて、バンドの視点だけの曲みたいに聞こえてたんですけど、この2番の歌詞が入ってめっちゃ世界が広がったなって。俺らだけじゃない、いろんな業界の人たちに関わる言葉だなと思いましたね。

吉田 神サイの10年間……自分は結構しんどかったんですよね。いろいろ楽しいこともあったんですけど、ストイックにならなきゃいけないところももちろんめちゃくちゃあったし、みんな擦り切れるぐらい努力してきたので。自分たちのサウンド面での葛藤とか、日々培ってきたものが出た曲だなと思います。歌詞に関しても、「これが自分たちの10年間でいい」ぐらいの感じがあるし。

──神サイって、メンバー固有の演奏スタイルがあって、そこに曲を寄せていくんじゃなくて、「曲が求めていること」に表現を合わせていくじゃないですか。日々研究開発をしていくというか。

柳田 ああ! そうですね。

──毎回「この曲に合う表現ってなんだ?」「在庫にねえなあ」ってなって、その都度新しく仕入れに行ったり、自分たちで作ったりするという。どのパートにもそれが言えると思うんですよね。

桐木 ああ、めっちゃその感覚わかるわあ(笑)。

黒川 スタイルの話でいうと、メジャーデビュー当初、「自分のドラムスタイルはなんやろう?」って考えて、「いや、ない!」ってなって(笑)。自分と他のドラマーを比べることばっかりやってたんですけど、「そこには何もない」って。神サイに合うドラムを叩けば、それで自分ができていくと思ったんです。だから、本当にさっき言ってもらった通りだなって思いました。

──バンドも10年やると、複数の人間が作るものであるからこそ、続けていくごとに「このバンドならこの音」っていう枠組みができていくものなんですけど……神サイはできていかないですよね。

柳田 そうですね(笑)。もう一生こんな感じなんだろうなって。「あ、次はこんなのやってみたいわ!」みたいな。

──でも、それが神サイなんですよね。

柳田 そうなんですよ。だからマジでこの10年間、出す作品が全部違う。バンドっていろんなあり方があって、たとえばジャンル感でいうと、僕らはラウドバンドもポストロックも大好きだし、J-POPも歌モノもシンガーソングライターも大好きだし──それがすべてですよね。この間、よぴと「神サイをひと言でたとえるなら?」って話してたんですけど、俺は「部活」かもと思って(笑)。きったねえ部室にこの4人で集まって、みんなでライブ映像観ながら酒飲んで、っていうことの延長で。それが今、10年目になって、ユニバーサルという会社の中で部活動をやってる(笑)。やっぱり音楽は楽しくないと終わるって思ってるんですよね。辛かったこともたくさんあったし、それが音とか歌詞に出て、味になったりもするんですけど、究極的には楽しくないと作品もライブも続けてられない。その一つひとつが神サイを形作ってるんですよね。

──部活の楽しさって、普通は「いつか終わっていくもの」であって。それを続けていくためには、自分の周りのものを自分で掌握しないといけないし、「変わらないために、変わらないといけない」わけですけども。神サイは、今このタイミングでそれをまさにやっているわけで、それがバンドの体制にも“スケッチ”にも表れている気がしますね。

柳田 そうですね。将来は「株式会社神サイ」にならなきゃダメだと思ってるし。この世の中、いつ何が起きるかわからないんで、スタッフがいなくなって突然この4人になっちゃう可能性もゼロじゃないし、仮にそうなったとしても「そんなの屁でもねえよ」って言えるだけの力をバンドとしてつけなきゃならんなって。20代の頃はとにかくがむしゃらに目まぐるしく変わっていく環境に適応しなきゃ!みたいな感じでやってきてたから、右も左もわかんなくて。最近になって、音楽で食べていくという仕組み、座組がちょっとずつわかってきました。でも、まだ1mmもわかってないと思うので、もっと勉強しなきゃなと思うし。10年目にして、初めてそういう考えが芽生えてきましたね。

──最後に、武道館と「これから」に向けての抱負を教えてください。

吉田 本当に節目の1日になると思います。さっきの「神サイをひと言で」っていう答えは見つからないままなんですけど……ジャンルにとらわれずにお客さんの気持ちに寄り添える、変幻自在というか「千変万化」なバンドだなって思ってて。ロックバンドで、その場その場で聴く人に寄り添ってあげられるバンドっていないと思っているので、そういうところもライブで観せられたらなって思います。

桐木 “スケッチ”ができたあとで特に思ったんですけど、前ばっかり向いてたんで、過去を振り返る時間があまりなかったんですよね。でも、この曲で初めて過去を振り返った時に、「想像以上に支えられて立ってたんだな」っていうのを実感したので、それが武道館で伝わればいいなって。あとは、エゴというか、ただ楽しみたいっていう気持ちも大事だなって。あんまり他者を意識しすぎても、伝わるものも伝わらないなと思うので、まずは4人が楽しくやれればいいなと思ってます。

黒川 柳田がインディーズの頃からライブで言ってた「ここにいる人たち、全員武道館に連れてってやるよ!」っていう約束を果たせるので、武道館でその次の約束を、またファンの人と結べたらなって思いますね。自分的にはやりたいことがいっぱいあって──海外ツアーも回りたいし。楽しみはたくさんあるので、ついてきてほしいですね。

柳田 4人で何回も何回も壁を乗り越えて今があって。まさか武道館でライブすることになるとは、10年前の自分は思ってなかった。本当に、衝動だけでバンドを始めてたから。10年前の衝動を全部ぶちまけたいなと思ってます。今の神サイは──あの時の10年後の神サイでもあるんですけど、マインドは10年前の自分たちで、音楽で楽しむ。一夜限りだけど、とにかくこの4人がしこたま楽しんだら、最高に楽しいんだろうなって思います。

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