ツアータイトルに登場する「開眼」という言葉は、「芸術の道で悟りを開き、真髄を極めること」を意味する。28都市を巡るライブハウスツアー「近接する陽炎」、そしてこのZeppツアーを経た神サイは、スポーツでいうところの「心技体」揃った状態で、ますますダイナミックになった音の塊とともに「開眼」した4人の魂がスパークするような圧巻のライブを届けてくれた。
1曲目“修羅の巷”から重厚なサウンドを轟かせた神サイは、なんと名バラード“夜永唄”もヘヴィなギターが牽引するロックサウンドにリアレンジ! アンコールで披露された「“修羅の巷”にも通ずる」という新曲まで、ライブハウスに相応しいエネルギッシュなセットリストを炸裂させていた。
終演後、ついに発表された自身初となる日本武道館ワンマンのタイトルは「神倭凡庸命 -カムヤマトボンヨウノミコト-」。神サイらしい意味深長なタイトルだけれど、この「凡庸」という言葉に柳田周作の想いが凝縮されているような気がする。
本編最後に披露された“夜間飛行”も、アンコール最後で披露された“illumination”も、たったひとりで生きているように感じる夜更けに、「ロックスター」として生きる覚悟を、「君」に向けて唄を届けることのすべてを歌う曲である。“illumination”にあるこんなフレーズ、《才能なんてさ 僕にはないけれど/唄うことだけが 全てだから/それしかないから/それだけなんだ》──「凡庸」(なんて決して思わないけれど)な「僕」がロックスターになれるのは「君」がいるからで、ライブという場で互いに命を燃やすことで《煌めく今》を生み出せる──それこそが神サイ、そして柳田のすべてであり、日本武道館では今まででいちばんの《煌めく今》を見せてくれる、そう確信した夜だった。(畑雄介)
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