Guiano、才気溢れるシンガーソングライターとして立つ。ニューアルバム『A』インタビュー!

Guiano、才気溢れるシンガーソングライターとして立つ。ニューアルバム『A』インタビュー!

たぶん、今の若い世代は飽き性な人が多くて、YouTubeも10秒ぐらいで区切りをつけて関連動画に飛んでしまうんです

――“最低だ”はフォーキーな曲かと思いきや拘りのシンセベースが入ってくるし、“アイスクリーム feat. 花譜”はロックな曲かと思いきや、エモラップ的な展開をみせるっていう。

「隙のない曲を作りたいんですよね。自分でもSpotifyとかで音楽を聴いている時に、ちょっと甘いところがあるとすぐ次の曲に行っちゃうし。今の若い世代の人って、たぶんそういう人が多いんですよ。飽き性で。YouTubeでも関連動画がいっぱい並んでるから、10秒ぐらいで区切りをつけてもっと面白いものを観ちゃうっていう。そういう中で、いろんな箇所でインパクトを与え続けていきたいな、という気持ちがあります」

――そういう気持ちは、ボカロ育ちとして直接リスナーと向き合い続けてきたからこそ生まれたのかもしれないし、ある種の強迫観念として働いているのかも知れないけど、今回の『A』というアルバムは強迫観念にまみれて音がゴチャゴチャした作品にはなっていないんですよね。スッキリと整理されている。それはなぜなんだろう?

「ちょっと大きいことを話すんですけど、『A』というタイトルは『コンセプトを置かずにアルバムを作ることがコンセプト』なんです。意味はないから、適当に『A』でいいや、みたいな。コンセプトなしに進める過程で、頭を空っぽにしなきゃいけなくて。リスナーのこととか消極的なことを一旦切り離して、今やりたいこととか、今まで自分が得てきたものに集中できたことが、うまく纏まった要因かな、と思います」

――僕が好きな収録曲の話をさせてもらうと、もともとは理芽さんへの提供曲だった“法螺話”のセルフカバーや、“風の吹くまま”で。このあたりの曲は、音数が少ないんですよ。でも、とても説得力がある。隙を作りたくないと言いながら、この音数なのがすごい。

「ありがとうございます。“法螺話”なんて、めちゃくちゃトラックが少ないんですよね。なんというか、やっぱり小手先だけじゃダメなんだと思います。この曲は明らかにビリー・アイリッシュとかを意識しているんですけど、音数が少なくてもイケるという前例があったからこそ、できた曲だと思いますね。音数を多くして満足するんじゃなく、曲によってちょうどいい音数にするという、引き算の感覚です。“風の吹くまま”なんて、バカでかいシンセを入れたらそれでいい、みたいにもなっちゃうから。リスナーに聴かせるんじゃなくて、聴いてもらう余地を残すというか」

――そうそう、聴き手が惹きつけられる感じがする。“法螺話 (self cover)”は、オリジナルバージョンも儚い曲調に理芽さんの歌声がハマっていて素晴らしかったんけど、それに負けず劣らずのセルフカバーになっていると思います。

「理芽ちゃんのレコーディングの時に、僕の仮歌をみんなに聴いてもらったんですけど、仮歌がいいって言ってもらえて。それでセルフカバーする流れになった感じですね」

このアルバムはGuianoっぽくないから嫌、とかではなく、これはまた違うGuianoという目線で見てもらえたらいいなって

――で、“アイスクリーム feat. 花譜”なんですが、これはもともと花譜さんに歌ってもらうつもりで作った曲なんですか?

「これは、CeVIO AI『可不(KAFU)』という、花譜ちゃんをモデルにした音声合成ソフトが発売されるんですけど、それのために書いた曲をリアレンジして、あらためて花譜ちゃん本人に歌ってもらいました。『可不(KAFU)』のほうはフューチャーベースっぽい感じなんですが、こっちではグッとロック風にして。でも、作った時から花譜ちゃんのことは意識していて、本人が歌ったらどうなるかなって。邪な話なんですけど、この曲はなんとしても本人に歌ってもらおう、と思っていました」

――《心さえいらない いらない 感情なんて/いらない いらない この歌詞でさえ/夏空がとても綺麗だ》っていう歌詞とメロディが、もろに花譜さんなんですよ。彼女が歌うカンザキイオリさんの作品っぽい、ということなんだけど。

「本当ですか。ずっと花譜ちゃんのこと考えていて、彼女には心の中に闇を抱えていてほしいっていうイメージがあって。もう、こうであってくれ、嫌なことで一杯であってくれ、その中で強く歌っていてくれ、みたいな。でも、花譜ちゃんには会ったことないんですけどね。今回のレコーディングも、コロナ禍だったから宅録で。話したことも顔を見たこともない、幻の存在、妖精です」

――ははははは! Guianoさんの中の花譜さん像に、寄せているんですね。《心さえいらない》という歌詞を歌う声が、めちゃくちゃエモいっていう。字面以上の意味が生まれている。花譜さんのボーカルを信頼しているからこそ、書けるラインだと思います。

「本当にそうですね。ここには自分はないです。花譜ちゃん本人が歌うことで、そういうふうになるだろうというイメージで作ったんですけど、もう一段上の、思っていた以上の曲になりました」

――会ったことはないけど、素晴らしい化学反応です。こうして話してみると、やっぱり軽やかに響きながらもたくさんの思いやアイデアが詰め込まれたアルバムだと思います。4月29日には、有観客&配信のワンマンライブが行われますけど、そこに向けての意気込みはどうですか。

「1回目のワンマンが完全に無観客で、ほとんどライブをしたこともないので、お客さんの前でできるのは、本当に嬉しいですね」

――KAMITSUBAKI STUDIOは「YouTubeファースト」という理念を掲げていて、それはたとえば、国境をも軽々と越えてゆくクリエイティビティということだと思うんですけど、Guianoさんの新しくてユニークな和洋折衷の音楽表現は、そこでも活躍し得ると思うんです。

「僕もウェンブリーとかでやってみたいな、と思ってるんですけど、やっぱりスキル面でもまだまだだし、今ではないかなという気持ちのほうが強くて。自分のスキルを磨くことに力を注いでいきたいです。アメリカのでかいアーティストが、それぞれに影響を受けた音楽を自由に混ぜてやるみたいな、そういうのに憧れていて。型にとらわれない音楽をやりたいな、という意識があります。『このアルバムはGuianoっぽくないから嫌』とかではなく、『これはまた違うGuiano』という目線で見てもらえたらいいなって思いますね」

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