『フォー・ザ・マッシズ』、すなわち「大衆のため」のアルバムである。そしてジャケットには地球。てらいなく言い切ってしまうところが素晴らしいのだが、ではこのアルバムが大衆ウケを狙って作られているかといえばもちろんそんなわけはなく、むしろ今作は前作以上にヘヴィで硬派だし、分かりやすいメロディなどほぼ皆無といっていい。それにこういうタイトルをつけて発表することがすでに、彼らのメッセージである。ジェイムスは本作は「レイヴしている人たちのため」のアルバムだとコメントしている。ここでいう「レイヴ」が「ニュー・レイヴ」のことでないことはいうまでもないだろう。

彼らの師匠筋にあたるプロディジーの復活劇が教えてくれたのは、レイヴとはまぎれもなく闘争であったこと、そしてニュー・レイヴが（無意識に）その「闘争」の姿勢を放棄していたこと、である。ハドーケン！はそんなシーンにケンカ腰で殴り込んできた。前作が奇襲めいた先制攻撃だったとしたら、本作は「かかってこいよ」とケンカを売っているようなアルバムだ。ここでまだ闘えるんだという確信が、音の重さと力強さに込められている。（小川智宏）