最後のアルバムとなることが示唆されていた通算4作目『ミュージック・イズ・ザ・ウェポン』。DJのジリオネアが自身の活動に専念するべく脱退したが、本来なら彼と最後の制作を行い、活動に一旦の区切りをつけるつもりだったのではないか。しかし結果的に、本作ではレーベルメイトの新DJ=エイプ・ドラムスが加入し、本作リリースと前後して驚きのドライブイン・ツアーも米各地で開催した。はっきりしたことは分からないが、心機一転の新フェーズに突入しているのかも知れない。
とはいえ、ポストEDM時代のヒット・メーカーとして君臨するようになったディプロが、きっちり舵取りをになった前作の路線を踏襲し、本作もダンサブルにして端正なポップ・ソング集となっている。スキップ・マーリーとの“Can’t Take It From Me”やマムフォード&サンズのマーカスを迎えた“Lay Your Head On Me”といったシングル群では華麗なハウス/フューチャー・ベース路線を押さえ、初出曲の多くではダンスホールやレゲトン、ヒップホップをミックスさせた濃厚なバウンス・チューンでバランスを取っている。客演の豪華さは相変わらずだが、気鋭の女性レゲトン・シンガーが参加した“QueLoQue(feat. Paloma Mami)”に漂う憂いた情緒と歌心が素晴らしい。
当初ディプロとタッグを組んでいたスウィッチが抜けた後のメジャー・レイザーは、ピーター・トッシュとバニー・ウェイラーが抜けた後のザ・ウェイラーズに似ている。最高のライブ・バンドへとグループを組織し直してシーンを席巻したボブ・マーリーと同様に、ディプロはヒット・チャートとダンスの熱狂を接続させ、メジャー・レイザーをよりグローバルな視点から興奮と共感を目指すグループへと成長させたのだ。(小池宏和)
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