前作『アトラス』から3年の間には、ダックテイルズとしても活動するギターのマット・モンデナイルが脱退し、友人のジュリアン・リンチが新たに加入するなどバンドの再編を迫られた彼ら。しかし、この4枚目となる新作を聴くかぎり、すべては順調に運んだ様子が窺える。ヴェルヴェット・アンダーグラウンドの3枚目を青写真としたような瑞々しくてほんのりサイケなソフト・ロック・サウンドに、損なわれたところは一切感じられない。
プロデューサーを務めたのは、アリエル・ピンクやナイト・ジュエルの諸作に関わるコールM.G.N.。00年代以降のUSインディ発LAサイケデリック・サウンドの鍵を握る人物のひとり、とも言えそうだが、その手腕がもっとも感じられるのは、7曲目“ホールディング・パターン”以降のアルバム後半部か。澄んだギターにまとわりつくようなシンセ、リズム・ボックスの無機質な電子音が妖しく際立ち、前半部のエヴァーグリーンな展開とは異なる表情を演出する。輸入盤に収録されている、冒頭にピアノを置いた最終曲“サタデイ”のアレンジもストレンジで面白い。中毒的な音の魅力に磨きがかかった一枚だ。(天井潤之介)
磨きがかかったスルメ的魅力
リアル・エステート『イン・マインド』
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