ゆったりめのミドルテンポで、歌も演奏もトリッキーなフックや仕掛けはなくて素直。他のアーティストの歌を押しのけて世間に刺していくような曲ではなくて、聴いてくれる人に落ち着いて届けるような、でも堂々としたクリープハイプからの新たな名楽曲だ。別に「今」っていうものに当ててない。自分が想像しうる未来までちゃんと見据えて、
そこまで届くぐらいのものを作れたら、あとで絶対後悔しない
“ざらめき”というタイトルと、イントロのギターのキラキラしつつもノイズと揺れるトレモロがかかった音色によってこの曲のイメージは瞬時に鮮やかに伝わってくる。そして《ダサい恋》と《一周して流行る》、《熱帯魚》と《夢見てたマーメイド》、《感傷》と《観賞》といった言葉が並んだり交わったりしながら気だるい閉塞感を描いていくこの歌は、クリープハイプの新たな「この夏」の歌でもある。
ファンにはすぐに届き、そしてこれから何年かの間にどこかの街角やフェスでこの曲に出会うそれ以外の人の心にも必ず届くはずだ。そんな深く確かな手応えを感じさせる一曲だ。
“栞”や“イト”のようにタイアップ効果も狙ったうえでの派手な曲ではない。かといって“キケンナアソビ”や“ナイトオンザプラネット”のように新機軸や進化に特化した曲でもない。今のクリープハイプのバンドサウンドへの自信、そして、けして派手なヒット曲ではない過去の数々の楽曲が今のクリープハイプのアリーナツアーやフェスのメインステージで若い世代からもしっかりと受け入れられているという自負、そんな確信がこの楽曲に結びついているのではないだろうか。
尾崎世界観に、“ざらめき”と今のクリープハイプについて語り尽くしてもらった。
インタビュー=山崎洋一郎 撮影=岩渕一輝(TRON)
(『ROCKIN'ON JAPAN』2025年9月号より抜粋)
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