現在発売中の『ROCKIN'ON JAPAN』10月号にあいみょんが登場!力作で力作で、売りたあてしゃあないです。
ていうか、完成したものがすごくいいので、手に取って触ってほしい、見てほしいっていう気持ちがすごくある
4枚目の傑作『瞳へ落ちるよレコード』はどこがどう最高アルバムなのか?
あいみょんとともに考える2時間全掲載ロングインタビュー!
インタビュー=小栁大輔 撮影=オノツトム
あいみょん、4枚目の傑作アルバムが完成した。
アルバムができるたびに「傑作、傑作」と書いている気がするが、本当に傑作なのだから、仕方ない。今回もただただ素晴らしい。これ以上注文のしようがない。
その背景を説明するに、あいみょんの場合、アルバムの楽曲がそれぞれに、それぞれの生きる場所で、思い切り呼吸をし、輝いている、という感じがする。
今回でいうと、全13曲分の――つまり、13通りの人格を持ったキャラクターが呼吸をし生きまくっている、という感じがする。
あいみょんにとっての「アルバム」というものは、何かがシンプルに集められた結果の呼び方などではなくて、誰かひとりが欠けてしまったらまったく成立しない、尊くて稀有な「共同体」のようなものとして存在し、完成されている。
1曲目“双葉”が堂々たる開会宣言のように鳴り響き、続く“スーパーガール”がどこか捻られた角度からのニヒルな告白を歌い、かと思えば、3曲目に置かれたとびきりのバラード“姿”がまっすぐに、恋の「これから」を歌ってくれる。
4曲目に登場する“初恋が泣いている”は今さら言うまでもなく、まさに4番打者のような、ど正面からのど名曲。で、5曲目“君のこゝろ”は、前の打者の王道モードからの意表をついたオルタナティブな攻め方をしてくるロックであり、6曲目“3636”はこれまた、これぞあいみょん!というミドルバラード、不意に終わりが訪れた恋を宅配ボックスというモチーフに託したさすがのリードトラックで――。
という具合に、あいみょんアルバムを語る場合、どういうわけかいつも、ひとつの流れで、バトンをつないでいくように語りたくなってしまう。
そこに「アルバム」を作るうえでの、あいみょん的な必然がある。
シングル曲を集めればいいのではない、ということなのだと思う。アルバムという共同体で活きる曲は、そこでこそ活きること――もっと言うならば、●曲目という場所でこそ意味をなす、そんな確かなキャラクターと役割のようなものを持っていなくてはいけない、ということなのだと思う。あいみょんはそういった確かな妙味を、間違いなく知っている。
恐ろしいのは、この完成された「アルバム」の作り方をあいみょんは、あいみょん自身も自覚しているように、2枚目『瞬間的シックスセンス』ですでに確立していた、ということだ。そこから『おいしいパスタがあると聞いて』を作り、今回その黄金比を引き継ぎながらの新たな傑作『瞳へ落ちるよレコード』なのである。
つまり、あいみょんは極めて優れたソングライターであると同時に、唯一無二の精度を誇る「アルバムメイカー」なのだ。
今回のインタビューでは、そんな話をたくさんさせてもらった。さらに、7曲収められた新曲について、セルフライナーノーツという形で解説してもらった。
名作が名作として生まれた必然を、あいみょんの言葉とともに追ってほしい。
そして、このアルバムを何度も聴き、『瞬間的』も『パスタ』も何回も聴き直してほしい。(小栁大輔)
(『ROCKIN'ON JAPAN』2022年10月号より抜粋)